その正体は”不運”
今の現状に落胆する3人の元へ、いつもの陽気を携えた異次元のセールスガールが姿を現した。
「みなさぁ~ん!お疲れ様ですぅ~!」
「!!」
大きく手を振りながらこちらに向かってくるオットロを3人はその視界に捉えた。
「オ、オットロさん!ご無事でしたか。今までどちらへ?」
「危なそうなので第2世界に避難してました~。向こうからば~っちり観戦してましたよぉ~!」
「そ、そうですか…」
「っは。地球滅亡の危機って時に高みの見物かよ?そうだよな、テメェには関係ねーことだもんな!」
「はい~、そうですぅ~!」
「なっ!!テ、テメェなぁ…」
「お客様が減るのは痛手ですけどねぇ~。でも大迫力の模様でしたねぇ~。まるで映画みたいでした~!」
「ふっ」
2人のやり取りを鼻で笑うギルティ。
「だけどいいのかよ?のこのこ出て来やがって。ここいら一体は放射線だらけだぜ。これでテメェも被爆者の仲間入りだ」
「あ~、大丈夫ですよぉ~。それなら心配無用ですぅ~」
「あぁ?どういうことだ?」
「こちらの世界に戻って来てすぐにこれを使用しましたのでぇ~」
するとオットロはカバンから何やら電子タバコの様な物を取り出した。
「オットロさん、それは何ですか?」
「こちら”クリーングリーンシガー”というものでして、こちらを加えて大きく息を吸い込むと辺り一帯の有害物質を吸収してくれる商品ですぅ~」
「何!?ではもうこの辺り一帯に放射線物質は無くなっているのか?」
「はい~!もう街は大丈夫ですよぉ~!でも皆さんは被爆しちゃいましたけどねぇ~」
「…いいのかよ。確かテメェらはこっちの世界にごちゃごちゃ首突っ込んじゃいけねぇんじゃねぇのかよ?」
「従業員の安全を守る際にはその限りではありませんのでぇ~。オホホホホホ~」
「っち…」
無邪気に笑うオットロを見て肩を落とす3人。
「ドレッドさんの1号ももう原型を留めていませんねぇ~。よろしければこちら弊社で回収致しましょうか~?」
「あぁ?」
「これじゃあもう売却は出来ませんし、邪魔でしょう?不用品回収もアフターフォローの一環ですのでぇ~」
「…好きにしやがれ」
そしてオットロはカバンから小さい壷の様な物を取り出し、バラバラになってドレッドの1号を全て吸い込み回収した。
「いやぁ~、しかし皆さん本当に大活躍でしたねぇ~!」
「…最後私が捨て身で奴に向かって行った際、急に奴の動きが止まった。お陰で核兵器を命中させることが出来たんだ」
「うっすら見えてたが、なんかレバーの操作が利かなくなっていたみたいだぜ。核ミサイルぶち込まれてさすがにガタがきたんだろ」
「ん~、それはどうでしょうかねぇ~?」
「あぁ?」
ドレッドの憶測にオットロが物を申す。
「デストロイド1号はとても優秀な破壊兵器です。あらゆる戦闘を想定した高額ロボットなので、少なくとも立ち上がれる余力がある状態でレバーが利かなくなるってことは考えにくいですね~。弊社の商品に不良品はないので~」
「じゃあ一体なんだってんだよ?」
「それは恐らくヨシオさんに下った”不運”ではないでしょうか?」
「”不運”?」
「ヨシオさんはご自身の”運”殆どを使いデストロイド1号を購入されました。その上であの様な不道徳なことを繰り返し”運”を消費し続けてはやがて底を尽き"不運”といった形で不幸や不遇が事象化されがちです~」
「…そう言えばそんなこと仰ってましたね」
「けどその事象が”レバーが動かなくなったこと”か、”あの兵士さんが戦車で応戦したこと”か、”ギルティさんが致命傷を免れ意識を取り戻したこと”か、推測し出せばきりがないですけどね~」
「…なるほど」
「もういい。あれこれめんどくせーご高説はもう沢山だ。こちとらとっくに頭のスペースオーバーしてんだよ!」
ドレッドが話を割って止めた後、3人の表情は再び深刻なものへの変わった。
「何人死んだのだろうか…」
「さぁな」
「残された人々も、これからの人生を思うと心が痛むな…」
すると突然、ドレッドが激しく咳き込み始めた。
「おい、大丈夫か?…っは!」
ドレッドの咳を受け止めた自身の手の平を見ると、そこには大量の鮮血が付着していた。
「ドレッド…まさか放射線の影響で?」
「…さぁな。あのガキとドンパチかました影響なのかも知れねぇが、どの道長くねぇだろ…」
「…くそっ」
するとドレッドは何かを思い立ちオットロに呼び掛けた。
「よぉ姉ちゃん、あの”リストボード”ってのよこせや」
「え?」




