全ての罪は家族のために
街のど真ん中で対峙するかたちとなった2体のデストロイド1号。
互いのけん制を皮切りに壮絶な戦いが幕を切る。
「ドレッドさん、邪魔するなら殺しますよ?」
「こっちの台詞だクソガキが!!!テメェだけは絶対に許さねぇ!!」
ヨシオがレバーを操作すると1号腹部の蓋が開いた。
「バリア!!」
ドレッドは何かが飛んでくることを分かっていたのか、手元にあるスイッチを押してバリアと叫んだ。
「なっ、何ぃ!?」
ドレッドの意図とは反して1号はその場で前蹴りを繰り出し、その攻撃を空を切った。
次の瞬間ヨシオの1号腹部から発射された大砲サイズのレーザー光線はドレッドの1号を吹き飛ばした。
「ぐああぁぁぁ!!」
「ドレッド!!!」
ドレッドの1号は後方にあるビルに叩き付けられたが、すぐに起き上がってきた。
「ち、ちっくしょう…」
「お、おい、一体どうした?」
「操作間違えたんだよ!バリアシールドで覆うはずだったんだが…」
「お、おい、大丈夫なのか?」
「仕方ねぇだろうが!丁寧に説明書読んでる暇なんてあったと思うか?それにあんなバカむずい内容、俺の脳みそが受け付ける訳ねぇだろうが!!」
「あ、あぁ…」
ギム刑事は勿論、ギルティやその他生き残った兵士達も地球の運命を預けるには頼りなさ過ぎる発言を聞き一気に不安に支配された。
「おいギム、テメェはポリ公共使って出来るだけ多くを非難させろ!ここら一体ごと吹き飛ぶぞ!」
「あ、あぁ、分かった!」
「ギルティ、テメェは近くで隠れてろ。隙を見つけたらその核兵器を奴にぶち込め!俺が近くに居ても躊躇しやがんじゃねぇぞ!!」
「…承知だ!」
「おい兵隊共!テメェらもさっさとここから離れて市民共の避難を手伝え!この辺に転がってる怪我した連中は諦めろ。連れ出してる間に俺達の戦いに巻き込まれてどっちも死ぬぞ!」
「!!!」
それを聞いた兵士達は断腸の思いで泣く泣くその場を後にし離れて行く。
そんな中、一人の重傷兵を介抱していた衛生兵らしき者は諦めきれずにその場を動こうとしなかったが、その重傷兵が渾身の力を振り絞り呟いた。
「い、行ってくれ、お前は死んではいけない…」
「バカな、貴方を残して行けません!!」
「お前の助けが必要な人が大勢いる…上官命令だ、生き延びろ…」
衛生兵らしき兵もまた、強く歯を食いしばり断腸の思いでその場を立ち上がり最後に重傷兵の手の甲に一粒の涙を落とし立ち去って行った。
重傷兵が避難する衛生兵の背に向けた敬礼の手は、間も無く力尽き小さな音と共に地面に落ちた。
その近く、睨み合うドレッドの1号とヨシオの1号。
一触即発な空気の中、ギルティはドレッドに望みを託していた。
「ドレッド、可能ならお前だけで奴を葬ることは出来んか?はっきりってあの死角の無い破壊マシンに無傷で近付ける自信はない…」
「いいか、こっちもはっきり言うが俺じゃあのガキには勝てねぇ。長くはもたねぇから急いでケリを付けろ!」
「なに!?」
「あのガキ、相当このマシンの使い方に慣れてやがる。多分俺が知らねぇ機能も色々と熟知してやがるはずだ…」
「奴があのマシンを操り始めたのはほんの数日前の話だぞ?」
「こちとらほぼ初見だ!その数日の差がでけぇんだよ!根暗なヲタク野郎だ、元々メカの知識があったのかもしれねぇけどな」
すると突然、轟音と共にヨシオの1号がこちらに向かって突進してきた。
「来たぞ!!」
ギルティは咄嗟にその場から離れ近くの瓦礫に身を隠した。
「!!!」
突進してきたヨシオの1号を受け止めるドレッドの1号、両者は両手を互いに組み合い地面を踏ん張り力比べの状態なった。
機械の軋む音だけを周囲に轟かせ、両者硬直状態が続く。
「ドレッドさん、メカ戦で僕に勝てると思ってるんですか?」
「っは!根暗なヲタク野郎は家にあるエロゲーでマスでもかいてやがれぇ!!」
ドレッドはレバーを力強く固定したまま足元にあるスイッチを踏み1号の右足でヨシオの1号を股の間から蹴り上げ宙に飛ばした。
「おぉぉ!!」
すかさずドレッドの1号は宙に舞うヨシオの1号に向かってキャノン砲を発射するも、ヨシオの1号は足元のジェット噴射でそれを交わす。
「っち!!」
ゆっくりと地面に着地し体勢を立て直しながら攻撃の構えを取るヨシオの1号。
「ドレッドさん、本気で行きますからね?」
「エリカの敵ぃ、必ずぶっ殺してやる!!!」
その頃ギム刑事は住民の避難させる指示を残し、自身は家族が住む16ブロックに到着していた。
そこで目にした光景にギム刑事は膝から崩れ落ちた。
「そ、そんな…」
そこにはひと目でデストロイド1号が暴れまわった痕跡だと分かる程の破壊され尽くした死の街が広がっていた。
「う、嘘だ…そんな…ドトルーー、ストローー!!」
大声で嫁と娘の名前を叫びながら街を駆け回るギム刑事。
当然の様に自身の自宅も跡形も無い状態まで破壊されておりギムの絶望は強みを増した。
すると遠くから1人の兵士が自身に向かって手を振っている姿が目に映った。
ギム刑事は全力疾走でその兵士の元へと向かう。
「生存者ですね?こちらへ!」
「私は警察本部のギム刑事だ!この街の人々はどうなった??」
「あ、刑事さん!はい、ご覧の通り街は壊滅状態です。ほんの僅かですが生存者をこのビルの地下で保護しています!」
「案内してくれ!今すぐ!!」
兵士がギム刑事を建物の地下に案内すると、そこは大型ショッピングモールの地下駐車場、いくつものブロックに分かれている中に数百人の市民が身を隠していた。
その表情は心身ともに傷付き恐怖と疲弊を隠し切れないでいる痛ましいものだった。
その中を闊歩しながら再び嫁と娘の名前を叫び探し続けるギム刑事。
ひとつひとつ全てのブロックをくまなく探し続けるも、駐車場一番奥、最終ブロックに辿り着いても家族の姿を見つけることは出来なかった。
ギム刑事は近くにいる兵士を捕まえ悲壮を纏った剣幕で掴みかかる様に問い詰めた。
「おい、他の避難者はどこだ?ここにいるのは本当にこれだけか??」
「は、はい。16ブロックの避難者はここにいるだけで全部です!他の避難場所はありません」
「ウソだ!ウソだと言ってくれ!!!他の生存者の調査はしたのか??まだ街中には生き残っている人達がどこかにいるはずだ!!」
「か、限られた人数ではありますが我々で周辺の調査は致しました。残念ですが現時点で確認出来ている生存者はここにいる人々だけとなります…」
「そ、そんな…」
ギムは兵士を掴む腕、そして足腰、表情から全ての力が抜け去り、再びその場に膝から崩れ落ちた。
兵士はいたたまれない表情でその様子を見つめるしかなかった。
するとギム刑事はまるで幽霊の様な力の抜けきった動作でゆっくりと立ち上がり地下室の出口へ向けて歩き始めた。
「ど、どちらへ?」
「探しに行く、まだ見つけきれていないだけかもしれない。いや、きっとそうだ!必ず2人は生きてる…」
そう言うギムの表情には一切の生気が宿っておらず、その目線はまるで亡霊のごとく焦点が定まっていなかった。
「そ、外に出ては危険では?いつまたあのロボットが戻ってくるとも限りません!」
「…構わん」
兵士はそれ以上止めることは無く、ただただギム刑事の後姿を見送るのみだった。
ギム刑事が肩を落としトボトボと出入り口に向かって歩いていた、その時、
「あなたーーー!!」
「!!!?」
ギムに届いたのあが聞き覚えのある声、その方向を振り向くと、そこには小さな少女を連れた女性がこちらに向かって走ってくる姿があった。
「ドトル!!!ストロ!!!」
「パパー!!」
ギムは2人に向かって駆け寄り、そして強く強く抱きしめた。
「ドトル!!!ストロ!!!よかった、本当によかった!!!」
「あなた、よかった、本当に!」
「パパー、パパー!」
ギム刑事はしばらく2人を渾身の力で抱きしめ続けた。
その体は安堵からか少しの震えを纏っていた。
不意にギム刑事が2人を離し娘ストロの顔を見ると、左の額に包帯が巻かれていることに気付いた。
「ストロ!?怪我したのか?」
「小さな瓦礫がぶつかったの。切り傷だけだから心配ないと思うけど、検査させたくても街がこんな状態だと…」
「そうか、ドトル、お前は?怪我してないか?」
「えぇ、私は大丈夫。アナタは?」
「あぁ大丈夫だ。ストロ、痛くないか?大丈夫か?」
「うん。でも怖いよ、パパ…」
「ストロ…」
自分に抱きつき、恐怖から体を小刻みに震わせ顔をうずめる愛娘を見てギム刑事は心が引き裂かれそうな思いだった。
「まだ6歳よ、こんな残酷な状況、あんまりよ…」
「パパァ、あいつやっつけてよ…」
ギム刑事は愛娘の言葉に何か強い決意を秘めたかのような表情を見せ、再びストロを強く抱き抱えた。
「ドトル、私は現場に戻る。ストロを頼んだぞ!絶対にこの場から動くなよ!」
「え?そんな、やめて!危険過ぎる!アナタにもしものことがあったら、私…」
「このまま何もしなければいずれ世界は奴に滅ぼされる。私はお前達のことだけは何があっても守ると誓った!それが自分にとっての正義だと思い出したよ」
「けど…」
「大丈夫だ、信じてくれ!」
「…アナタ」
ギム刑事は娘のストロを優しく自分から離し、真っ直ぐにその目を見つめ力強く言い放った。
「ストロ、パパが悪い奴をやっつけてくるから、ここでママと待っててくれるね?」
「…うん」
少し眉をひそめながらも健気にうなずく娘の顔を確認したギムは力強く立ち上がり、地下の避難所を去って行くのだった。




