苦渋の決断、捨て身の作戦、そして断行
その頃ギム刑事と殺し屋のギルティはタリズ地区の入り口付近、軍が防衛ラインを敷いている場所まで辿り着いた。
数百メートル先には次々と高層ビルを破壊し続けるデストロイド1号の姿があった。
「兵長、状況は??」
「ダメです、手が付けられません。他の兵や地元警察が必死に市民の非難誘導に当たっていますがとても間に合っていません。死者は増える一方です!」
ギムは勢い余って軍を指揮する兵長の胸ぐらを掴み怒涛の剣幕で迫った。
「私の家族がいるんだ!避難者はどこに集まっている??名簿はないのか??第16ブロックの破壊状況は一体どうなっているんだ???」
「お、落ち着いてください!!避難者は散り散りです。名簿を管理する余裕なんてありません!16ブロックの状態も不明です!!」
ギムは兵長を離しギルティに視線を送った。
「ギルティ、時間がない!頼む!!」
「…あぁ!」
ギルティが承諾を見せると、ギム刑事は兵長に命令を促した。
「兵長、今からこの防衛ラインをギリギリまで前進させろ。そうしたら私と彼女が瓦礫の影に隠れながら奴に近付く。3人の兵を私たちの護衛に付けろ。残りは1組5人ずつに分かれて各方角から発砲し奴の気を引け!」
「はぁ?一体何のために?」
「いいから言う通りにてくれ!ワケは後で話す!この作成が失敗したら世界は滅亡する!!」
「…は、はい、了解しました!」
兵長の男はギムの様子から何かしらの作があることを感じ取ったのか、防衛ラインに待機する全兵にギム刑事からの命令を伝えた。
その横でギルティが小声でギム刑事に言葉を掛ける。
「…この兵達も皆犠牲になるぞ、お前も」
「…もうこれ以外方法はないんだ。彼らには本当に悪いと思っている。ギルティ、頼みがある」
「何だ?」
ギム刑事は内胸ポケットから警察手帳を取り出した。
それに入れていた家族の写真を抜き取りギルティに渡した。
「恐らく今回の作戦で生き残れるのはお前だけだ。もし私の家族に会えたら、"愛している"と、伝えてくれ」
「…いいだろう」
重苦しい空気の中、兵長の声が響いた。
「作戦開始だ、行くぞ!!!」
兵長の掛け声と共に防衛ラインが1歩また1歩とデストロイド1号の元へ接近して行く。
ヨシオは建物の破壊に夢中といった様子で防衛ラインの地道な接近には気付いていない様子だった。
「まだだ、まだ進め…」
じりじりと距離を詰めて行く。
その度にデストロイド1号が奏でる轟音が音量を増していく。
「もうこれ以上は…」
「まだだ、まだ進め!」
停止を提案する兵長、前進を促すギム刑事。
慎重にことを進めるべきだという姿勢は同じであるも意見は対立していた。
「気付かれたらおしまいです!ニュースの映像見たでしょ?奴がその気になれば我々なんて一瞬で吹き飛ばされます!部下を無駄に死なせるわけにはいかないんです!!」
「ギム、私も同感だ。これ以上はさすがに危険過ぎる。動くぞ!」
「…仕方ない!兵長、頼む!」
「了解です。よく分かりませんが、信じます!」
兵長は背後にいる兵士に手で合図を送り、それを見た兵士たちは蜘蛛の子を散らすようにバラけて行動し始めた。
「!」
大群の急な挙動の変化と異変にヨシオが気付き、ビルを破壊する手を止めた。
「…なんだ?」
「撃てぇぇぇ!!!」
兵長の発砲命令に各所に散らばった兵士たちは一気にデストロイド1号に向かって発砲を開始した。
多くの銃弾が命中するも、やはりかすり傷ひとつ付けられずヨシオは一切怯む様子を見せない。
「…なんだこいつら?無駄だってことだ分からないのか?やけくそにでもなったのか?」
ヨシオは操縦レバーをゆっくりと操作し丁寧に一発ずつ手の平からのビームをあちこちに散らばる兵士達に向かって発射し出し始めた。
「うわぁぁぁ!!」
「ぐあぁぁああ!!」
被弾した兵士達は多くの瓦礫と共に空中に高く舞い上がっていった。
「撃てぇぇ、撃てぇぇ!!」
兵長の命令に続けて移動を繰り返しながら発砲を繰り返す残りの兵士達。
しかしデストロイド1号が放つビームやキャノン砲、肩部分から発射される追跡ミサイルなどの攻撃により徐々に兵士達の数は減っていく。
凄惨な状況にも関わらずギム刑事とギルティは瓦礫の物陰に隠れ、冷静に一瞬のチャンスを狙っていた。
「おのれ、もうこの距離から投げるしかない!」
「ダメだ、チャンスは1回しかない!出来るだけ距離を縮めるんだ!!」
「そんなことをしていては殺されるだけだぞ!」
「はっ!」
ギム刑事が横目でデストロイド1号の様子を伺った瞬間、こちらに対して完全に背を向けている様子が見えた。
「今だ!!!」




