「テメェの営業成績を更に上げてやる!」
ギム刑事は届いてきたニュース映像に今にも発狂し混乱しそうな気持ちだった。
しかしそれをを必死に抑えギルティの両肩を掴んで懇願し始めた。
「頼むギルティ!決断してくれ!我々警察が命に代えても君の事は守る!だから、だからその核兵器で奴を吹き飛ばしてくれ!!」
「!!」
ギルティは咄嗟の出来事に一瞬息を飲んだ。
「もう今からでは避難も間に合わない!頼む、頼む!!」
「…し、しかし、拍手ひとつでいち軍隊を吹き飛ばす威力だぞ?本当に守れるというのか?」
するとギム刑事は一瞬にして頭を地面に向かって急降下させギルティの目の前で渾身の土下座をして見せた。
「全力は尽くす!私は君の傍から離れない!君が狙われたら私が囮になる!奴が私を攻撃しているうちに突撃してくれ!その時間は私が身を投げ打って必ず作り出す!だから、だから頼む!!」
「…」
ギルティはギムの必死な姿を見て肩の力を抜き、改めて手に握る核兵器を見つめ決意の表情を見せた。
「家族への愛は国際問題をも凌駕する、か?まぁいい。このままではいずれ殺される。一か八かだ」
「ギルティ!!」
「貴様の奥方の顔も拝んでみたいと思っていたところだ」
「…ありがとう、本当に。必ず、必ず守る!!」
「ふん、出来もしない約束をほざくな。いいか、もちろん無償で引き受けるわけではない。成功した暁にはひとつ条件がある」
「…なんだ?」
ギルティは小さな声でギム刑事に耳打ちをした。
「そ、そんなことを…?」
「さもなくばタリズ地区が破壊されつくすまで私はここを動かん」
「…わ、分かった。約束する!必ずだ!」
「…よし!」
そうして2人は大急ぎで病室を出て行った。
1人残されたオットロはただただ呆然と立ち尽くしていた。
「あらあら~、第7世界は争いが多いんですねぇ~」
すると突然オットロの持つカバンの中から携帯端末音と鳴らし始めた。
「!」
取り出し画面を確認すると、ある人物から呼び出しが掛かっている内容が表示されていた。
「あら?この方は…」
オットロはテレポートカードを取り出し病室から一瞬にして姿を消した。
オットロがテレポート先に到着すると、そこは人気の無いビルとビルの隙間道、腕組みをしてオットロを待ち構えていたのは麻薬犯のドレッドだった。
「ドレッドさん、いかがなさいました~?」
「ックソが。地球滅亡の瀬戸際だってのにテメェは涼しい顔しやがって。所詮は他人事か?あぁ?」
「あはは~、すみませ~ん」
「目の前でガキが殺されたんだぞ!?それでもテメェはなんとも思わねぇのかよ??」
「いや~、それは…」
「っち…。もういい」
ドレッドはひとつ舌打ちを鳴らすと、ポケットに手を入れてオットロに問い掛けた。
「よぉ、商品は買い直すことが出来るんだったよなぁ?」
「へぇ?あ、はいー、可能ですよぉ~」
「もう一度あそこへ連れて行け!買い直し希望だ!」
「あらら。またどうしてです?」
「決まってんだろうが!あのクソロボットをぶっ壊す商品を探すんだよ!!」
「はぁ~。ですがデストロイド1号は第7世界の皆さんにとってはかなりの高額商品なので難しいかと~」
「んなことはさっき聞いたんだよ!」
「それに元々ドレッドさんが持ってる運の総量では買えなかった訳ですし、あのコピー機を売っても6割り程度の運しか戻ってこないので更に遠のきますよ~?」
「んなことも分かってんだよ!つべこべ言わずにさっさと連れてけ!!」
「は、はひぃ~!」
ドレッドの怒声にびくついたオットロはそのまま手に持っていたテレポートカードを空に向かって掲げた。
「じゃ、じゃあ私の肩に手を置いて下さい~」
無言でオットロの肩に手を置くドレッド。
するとオットロがテレポートを唱える間際、ドレッドは小さな声でオットロに向かい呟いた。
「安心しな、こっちにも策があんだよ。テメェの営業成績を更に上げてやる!」
「へぇ??」
ドレッドが意味深な言葉を発し終わると共に2人は第2世界へと消えて行ったのだった。




