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貯まった運で核兵器を  作者: レイジー
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絶望と決別

 ギルティはオットロに向かい核心を問い掛けた。


「う~ん、そうですねぇ~。デストロイド1号の防御スペックは確か戦車大砲まででしたので、至近距離で爆発させれば大きなダメージは間違いなく与えられると思いますけど~」

「至近距離!?」

「ですね~。いくら核兵器とはいえど、デストロイド1号自体は戦車大砲の攻撃を"無傷保障"している商品なので、ある程度近い距離でないと厳しいかと~。あのマシンはスピードも速いのである程度の距離があるところで爆発させては逃げられる可能性も高いですし~」

「…いくら私自身は被爆しないとはいえ、あの出鱈目な破壊マシンに至近距離まで近づくのは至難の業だな…」

「ヨシオ君は君が核兵器を持っていることを知っている。もし見つかれば真っ先に狙い撃ちされるだろう」

「テメェ一流の殺し屋なんだろ?何とかならねぇのか?」

「…さぁな、あくまで現実世界での話だ。SFレベルの破壊マシンなど相手にしたことは無い」

「まぁいずれにしてもそれはあくまで最終手段の話だ。他に手は無いかを考えるんだ!」

「んな悠長なこと言ってる場合かよ?いい加減目を覚ましやがれ!!」

「いいかよく聞け!この国は非核国として立場を保ってきた。そんな国で莫大な犠牲が伴う爆発が起きてみろ、世界は混乱どころの騒ぎじゃなくなるぞ!」

「こいつが持ってんのはあのデパートの商品だろうが」

「なんて説明する?異世界にある摩訶不思議な百貨店で自身が持っている”運”を使って購入した手の平サイズの核兵器でしたと?そんなことを国連や法廷で発表してみろ、何も解決出来ず、お前が言った通り全員で精神病棟送りだ!」

「世界を救うために必要なことするだけじゃねぇか!」

「いいか、私だって保身や感情だけでこんなことを言っているのではない!お前らみたいな連中にはうっとおしい話だろうが、ルールを敷きそれを死守することで平和は保たれるんだ!」

「今はその平和ってやつがぶち壊されてる最中だろうが!」

「だから最終手段としては考えていると言っているだろ!今は他に方法が無いかを模索することが先だと言っているんだ!」

「だから、そんな悠長な…」


 ドレッドが何かを言いかけたところでギム刑事がドレッドの胸倉を掴み真っ直ぐな瞳で見つめ諭し始めた。


「私とて長年刑事をしている身だ。不測の事態、情状酌量、そんな状況があるのは痛いほど分かっている!だがな、状況を考慮して破られるルールでは意味無いんだ!」

「…」

「そんな甘いルールではダメなんだ。破られることが当たり前になってしまってはそもそもルールの意味は無い。不道徳な輩がやりたい放題だ。しかも今回はそれが国連を巻き込んだ核の話。この混乱を利用して一体どれだけのクズ共が戦争を起こして金儲けをすると思っている!どれだけの罪の無い命が惨殺されることになると思う!!」

「…」


 ドレッドはギム刑事の剣幕に少し怯んだ様子を見せたが、やがて顔に血色を戻し勢いよくギム刑事の手を払いのけた。


「勝手にしやがれ!テメェのせいで世界は滅亡だな!」


 捨て台詞を吐き捨てドレッドは病室を出て行った。

ギム刑事は黙ってそれを見送る中、ギルティはギムに問う。


「威勢よく語ったはいいが、他に手段の見当はついているのか?」

「そ、それは…」

「本音では使うしかないと思っているんだろ?」

「…」


 ギム刑事は沈黙をもって肯定した。


「君はどうなんだ?」

「?」

「それは君が買った商品だ。決定権は君にある。だがそれをもって奴に挑むのははっきり言って自殺行為だぞ。無論警察や軍は援護するが、それでも…」

「…」


 ギルティは手に持つ核兵器をぎゅっと握り締めて考えている様子だった。


「はっきり言っておくが、私とて死は御免こうむる。これをもって奴に挑めば殺されるかも知れない。仮に成功しても、これで奴を止められる保証はない」


 ギム刑事が続ける。


「そして成功したとしても莫大な数の市民が犠牲になり、その後世界は混乱が訪れ戦争が勃発すれば多くの人間が犠牲になる」

「だが、他に方法はない…」


 病室に重苦しい空気が流れたが、それは長くは続かずTVのニュース映像がそれを一変させた。


[只今入ったニュースです。連日各地区で暴走を繰り返している巨大破壊ロボットが、現在タリズ地区に現れた模様です]

「!!!」


 TVの臨時ニュース音声が聞こえた瞬間、ギム刑事はTVにかぶりつき掴むその手は小刻みに震えていた。


「現れたか…」

「…ッッ」

「ん?おい、どうした?」


 ギルティはギムのただならぬ雰囲気に疑問を抱いた。


「タリズ地区…、私の家族が住んでいる!!」

「何!?」

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