”運”の正体
警察署内で呼び出し器を使いオットロを呼び出したギム刑事は突然核心的なことを問い始めた。
「仰っていた”運”とやらについて、もう少し詳しくお聞かせいただけませんか?」
「と、いいますと?」
「んー、そうですねぇ、何から聞いていいやら…。それではまず何故今回我々5人が選ばれたんですか?」
オットロは徐にカバンから細長いケースを取り出しそれを開くと中には眼鏡の様な物が出てきた。
それはオットロが始めて地球に来た際、空中から5人を捜し当てる際に使っていたレーダーが映る眼鏡だった。
「従業員専用の商品"スカウティング眼鏡"です。こちらで比較的多い”運”を貯めている方を厳選しその中からランダムに皆さんを選ばせていただきました~」
「なるほど。"運"を与えるのは"神"だと仰いましたね?」
「非科学的な表現ですが、便宜上そう表現しておりますね~」
「一体どういった人間がいわゆる”運を多く貯めている人間”なのでしょうか?もう少し詳しい概念が知りたいところです」
「んー、それは難しいですねぇ~。最初にお会いした時にも説明致しましたが完全には解明されておりません」
「そうですか…」
「あー、でも我々の会社にも"研究部門"がありまして、おおよそのパターンや概念は日々解明されつつあります。その辺でよければご説明しますよ~」
「是非。例えばあの難民の少女は今までずっと不運で”運を使っていなかった”からですか?そんな子供たちは世界中に数え切れない程居ますが、何故あの子を?」
「やはり特別に大きな”運”の持ち主でした。あの方に関しては”戦争難民”という境遇に生まれながらも一切盗みや詐欺を行ってこなかったことが大きく評価されたのではないですかねぇ~」
「え!?」
「通常そんな環境であれば生き抜くために人を殺さないといけないことが当たり前ですからねぇ~。けど彼女はそうしなかった。亡くなる前のご両親の遺言のようですよ~」
「な、なるほど…」
「あの殺し屋の方もどうやら多くの人々を助けるために少しの悪人の方々を殺めているようですね~。主に法の裁きから逃れつつ大勢を苦しめている人が対象みたいですよ~」
「それはまぁ、なんとなくですが知っています」
「まぁ全て推測の範囲ですけどね~」
「”人のために尽くす”とか”正しく生きる”という他に”苦しみに耐える”ということも”運”を構築する要素に成り得ますか?」
「はいー、とても有効ですよ~。様々なデータから確証済みです~」
「なるほど。それならあの自殺したがっていたヨシオ君も合点がいくな…。しかしあのゴーアンだけはどうしても納得がいかん…」
「ゴーアン?」
「あぁ、あのドレッド頭の男です。言葉遣いの悪い」
「あー、あの方ですね~。あの方は…」
ギム刑事はオットロからの話に少し驚いた表情を見せていた。
その後も少しの時間会話のが続きそれを終えると、オットロはテレポートカードでその場から姿を消したのだった。
その頃ドレッドは精力的に麻薬取り引きの販売ルートを広げていた。
夜の港で高級なスーツに高級なコートを羽織った傷顔の男と手荷物を交換し合っている。
お互いが中身の確認を済ませると何を言うこともなく2人はそれぞれの反対方向へ歩き去っていった。
ゴーアンことドレッドが暗い港道を歩き進んでいると目の前に人影があることに気付く。
「!!」
そこに立っていたのはギム刑事だった。
「て、てめぇ!なんでこんなところに!?」
ドレッドは麻薬の取り引き現場を見られてしまった恐れがあるこの状況に強く身構えた。
しかしすぐに様子が違うことに気付く。
(…なんだ?)