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貯まった運で核兵器を  作者: レイジー
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隠せぬ真実”トルトーレの涎”

 女殺し屋ギルティとのひと悶着騒動を終えたギム刑事は血相を変えてカードキーをフロントに置き去さり、ホテルの入り口付近で息を切らしていた。


「はぁっはぁっはぁっ…。ま、全く、なんて破廉恥な女だ。…あ!あぁぁ、し、しまった。拳銃…」


 腰元に手を当てたギム刑事は拳銃をギルティの部屋に置いて来てしまったことに気付いた。


「くそっ、これを使う間もなかった…」


 ギム刑事は胸ポケットから何かのスプレーの様なものを取り出しそう呟いた。

すると突然反対側のポケットに入れておいた携帯端末が鳴った。


「はい、ギムです」

[ギムか?私だ]

「警部、どうしました?」

[例の連続殺人犯を挙げた。今、取調室にいる。至急戻って来てくれ]

「なんですって!?分かりました。至急向かいます!!」


 ギム刑事は端末をポケットにしまい大急ぎで路上タクシーに乗り込み走り出した。

数十分後、ギム刑事は警察署に到着し取調室と思しき部屋の前に立つ男に声を掛けた。


「警部、お待たせ致しました。ホシは中ですか?」

「あぁ。今回も手強そうだ。いけるか?」

「お任せください!」


 ギム刑事が取調室の中に入ると大柄で人相の悪い肥満体型の男がふてぶてしく椅子の背もたれに大きく寄りかかっていた。


「…」


 部屋に入ってきたギム刑事をこれ見よがしに睨み付ける大柄の男。

ギム刑事はその男から一切視線を逸らすことなく机の上にある封筒を開けた。


「…お前には5件の連続殺人罪の容疑がかかっている。相手は全員が高齢者。お前の仕業か?」

「おいおい刑事さんよぉ、カツ丼は出ねぇのか?そんならさっさと帰らせてくれよぉ。いつになったら終わるんだよぉ~」

「…」


 まともに取り合う気配の無い男の態度にギム刑事は額に青筋を立てた。

そして先程見せたスプレーの様なものをポケットから取り出しいきなり容疑者の男に吹きかけた。


「うわぁっ!な、なんだ、何しやがる!?」

「お望み通り早めに終わらせてやるのさ…」


 ギム刑事はスプレーを胸ポケットにしまい机に両手を付いて男に迫った。


「この5人を殺したのはお前か?」

「そうだ。……え!?あ、あれ…?」

「何故殺した?」

「金目的だ。え!?あ、あれ?あれ?なっ、なんだ?」


 男は明らかに様子がおかしく、自分の思い通りな発言が出来ないといった様子だった。

ギム刑事はニヤリと口角を上げ続けて質問を投げかける。


「殺人に使った凶器はどこに隠した?」

「い、家の近くの川に捨てた。お、おい、なんだ?なんなんだよ、これ?どうなってんだよ、おい!?」


 男は顔中に脂汗を噴出し慌てた様子で自分の頭を抱え込み困惑し始めた。


「…これが最後の質問だ。殺した5人に対して懺悔の気持ちはあるか?」

「べ、別にねぇよ!年寄り共なんて国の老害だろ。死んだほうが国のためだろうが!」


 それを聞き終わったギム刑事は突然、うずくまる男の髪の毛を鷲掴みにし力ずくでその顔を持ち上げた。


「ぐわぁっ!?」


 そして自身の顔を男に近付け睨み殺すかのごとく剣幕で迫る。


「いいか?覚悟しておけ。お前のようなクズはこれから一生の生き地獄を味合わせてやる。法を犯し、人の命をなんとも思っていない奴には死にさえ値しないってことを思い知らせてやる!!」


 そう言い終わったギム刑事は男を突き放した後、取調室から出て行き外で待機していた警部の男に声を掛けた。


「お聞きになられましたね?すぐに捜索隊を当たらせて下さい」

「あぁ分かった!しかし最近どうしたんだ?一体どんな手品を使ったんだ?次から次へと自供させているが…?」

「たまたまですよ。犯人も良心の呵責に押し潰されそうになったんでしょう」

「そうか。しかし本当によくやった!このまま手柄を挙げ続ければすぐに上にいけるな」

「いえ、私は大きく昇進するつもりはありません。常に現場において正しいことをしていきたい。それが信念です」

「ははは、全く今時珍しい熱血漢だな。全くお前らしい。おっと、じゃあそろそろ行くぞ」

「はい、お願いします!」


 警部の男はギム刑事に言われた通り捜索隊を出動させるべくその場を去っていった。

警部の姿が見えなくなったことを確認したギム刑事は周囲をキョロキョロと見渡し誰も見ていないことを確認すると、廊下を少し進んだ右手にあるドアを開け小さな部屋へ入った。

部屋の鍵を閉めるとズボンのポケットから何やら小型のスイッチのようなものを取り出す。

それはオットロがアフターフォローのためと商品購入者5人に手渡した呼び出しのスイッチだった。

ギム刑事は改めて部屋の中に誰も居ないことを確認した上で恐る恐るスイッチを押した。


「おろろろ!?」


 その瞬間、第2世界において自席でデスクワークをこなしていたオットロの携帯端末が呼び出し音と共に震えた。

オットロは端末を確認しギム刑事から呼び出しが掛かっていることに気付いた。


「あらら~、あの刑事さんですね~。すみませーん、ちょっと外回りに行って来ます~」


 オットロは急ぎ目で机を片し、カバンと上着を取り"テレポートカード"にてその場から姿を消した。

ギム刑事がスイッチを押してからやく30秒ほどしてオットロはギム刑事の居る小部屋に瞬間的に姿を現した。


「おわっ!お、驚いたな…」

「どうもですぅ~。ご無沙汰しております~。お元気でしたか~?」

「え、えぇ。お陰様で。突然お呼び立てして申し訳ない」

「いえいえ~、大切なお客様ですから~」

「この商品、有効に使わせていただいてます」


 ギム刑事は先ほど取調室で殺人犯の男に吹きかけたスプレーを取り出しオットロに見せた。


「あ~、"トルトーレの涎"ですね~!」

「えぇ、このスプレーを吹きかけられた者は5分間真実しか語れなくなる。何とも素晴らしい商品です!」

「ありがとうございます~。でも貴方は確か私達の世界で言うところのセキュリティの方ですよね?それなら犯罪者を捕まえるために有効な商品は他にいくつかあったと思いますけど、何故それを?」

「確かに迷いました。実は我々警察は容疑者や犯人を逮捕することは比較的簡単なんです。一番難しいのはその捕まえた容疑者を有罪に持ち込むことなんです。そのためには動機や証拠品が大きく鍵を握りますので、この商品が打って付けだと考えました」

「なるほど~」

「…昔の話ですが、当時15歳の少女を強姦した男を無罪で釈放してしまったことがあったんです。汚い手を使われてしまって…」

「そうなんですか~」

「あぁ失敬、話が逸れました。実は今日お呼び立てしたのは商品のことではないんです」

「はい~?」

「例の"運"とやらについてです」

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