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貯まった運で核兵器を  作者: レイジー
13/42

何でも複製”マルチコピー機”

 5人が商品を手に入れてから少しの時が流れた。

麻薬犯のドレッドはオットロにさらわれた際に居た廃墟ビルと同じ様な場所に佇んでいた。

数メートル向かいに立っている黒尽くめの男と何やら小声で会話を交わしている。


「ブツだ」

「金だ」


 お互いが持っていたジュラルミンケースを床に置き相手に向かって蹴飛ばし合った。

2人が足元に滑り込んできたケースを開けると、ドレッドが開けたケースには札束が、黒尽くめの男が開けたケースには小分けに袋詰めされた白い粉が入っていた。


「…確かに」

「…こちらも問題ない。しかしずいぶんと気前がいいもんだな。この量をこの値段で捌いてくれるとは」


 黒尽くめの男が少し不思議そうにドレッドに問い掛けた。


「まぁちっとばかしいい生産ルートを確保出来たんでな」


 不敵な笑みで札束を手に取り吟味しながら答えるドレッド。


「…まぁ深くは追求しないが、もしややこしいことをしているなら取り引してる俺達の身も危ない。何か少しでもおかしなことがあれば、分かってるな?」

「分かってるさ。こっちだって死にたくねぇからな。お宅らには迷惑はかけねぇ」

「ならいいがな。我々の商売のためにも出来ればお前を殺したくはない。お互い助け合いといこうじゃないか」

「で、次はいつだ?」

「おいおい、これだけの量を捌いてもう次の話か?」

「言ってんだろ、時間がねぇんだよ!もっと金が要る。出来るだけ早く、出来るだけ多く!」

「…何のために?」

「…関係ねぇだろ」

「…また連絡する」


 2人はそれ以上の会話をすることは無くお互いとは反対方向に向かってその場を去って行った。

ドレッドは人目を気にしながら物陰に隠れつつどんどんと町の中心街に歩みを進めて行く。

とある高級マンションの入り口に辿り着いたドレッドは設置されたセキュリティ装置に暗証番号を入力しドアを開け中に入って行った。

エレベーターに乗り目的の階に到着しドアが開くと、そこには街を一望できる四方ガラス張りの部屋に豪勢な家具が所狭しと置かれていた。


「ふー」


 ドレッドは持っていたジュラルミンケースをソファの横に置き上着を脱ぎ捨てた、すると、


”チーン”


「!」


 隣の部屋から電子レンジの様な音が聞こえた。


「…あいつまた食ってんのかよ」


 ドレッドが音の鳴った部屋を開けると、そこはダイニング。

豪勢な料理が置かれたテーブルを前にエリカが満面の笑みで座っていた。


「あ、お兄ちゃんお帰りー。お仕事終わったの?」

「お前また食ってんのか?」

「うん、このレンジが作ってくれる料理本当に美味しいよ。お兄ちゃんも食べる?」


 テーブルの中央に置かれた少し奇抜なデザインをしている電子レンジの様な箱型の機械、エリカが購入した商品"天空料理人のオーブンレンジ"だった。


「あぁ、そーいやぁ腹減ったな」


 ドレッドはエリカが座っている向かいの椅子に腰を下ろした。


「はい、お兄ちゃんはコレどうぞ」


 エリカはレンジから取り出した料理をドレッドに差し出す。


「こいつぁ何だ?」

「"チキンナンバン"っていう料理だって。鶏を使った小さい島国の伝統料理らしいよ」


 ドレッドは白いソースがかかった肉料理と思しきものをゆっくりと口に運び始めた。


「…美味いな。便利な商品もあったもんだ」

「いただきまーす!」


 エリカは両手を顔の前で合わせ、目の前に広がる料理を勢いよく食べ始めた。


「ん~~~~、美味しいーーー!!」


 幸せそうな表情を見せながら豪快に食べるエリカを横にドレッドも静かに料理を平らげていく。

一足先にドレッドが料理を食べ終わったことを確認したエリカはドレッドに問い掛けた。


「ねぇねぇ、お兄ちゃん何買ったの?」

「あぁ?仕事用品さ」

「なになにー?どんなの?教えてよー」

「あれだ」


 ドレッドが椅子の背もたれに肘を乗せリビングにある大きな機械を目で指した。


「なにあれー?」


 エリカが見た先にはオフィスやコンビニエンスストアで置かれているコピー機の様な大型の機械があった。


「"マルチコピー機"だとさ。あの機械に挟める物は何でもコピー出来る。ただし生き物は出来ねぇらしい」

「へーーー、すごーい!何をコピーするの?お金?」

「いや、金には通し番号が付いてる。全く同じ物がコピーされちまうから番号が重複しちまって偽札の疑いで足がついちまう」

「ふーん。じゃあ何コピーするの?」

「…何でもいいだろ。大人の話に首突っ込むな」


 ドレッドは話を無理やり切り上げると自分が食べた皿を台所の流しに持って行こうと立ち上がった。


「あ、待って。そのお皿このレンジにいれて!」

「あぁ?」


 エリカはドレッドから皿を受け取り、"天空料理人のオーブンレンジ"に入れて蓋を閉めた。


「お皿とかゴミとかはこのレンジにいれて"ご馳走様ボタン"を押すと処分してくれるんだよー」

「…へぇ」


 ドレッドはエリカが言った通りレンジの中から皿が消えたことを確認した後、例のコピー機の前に立った。

コピー機の横においてあるダイヤル式のセキュリティボックスのメモリを合わせ扉を開けると、先程黒尽くめの男に渡した物と同じ小分けに袋詰めされた白い粉が大量に入っていた。

ドレッドは徐にその粉の入った袋をコピー機の上に乗せていく。

蓋を閉めスイッチを押すと排出口から同じ量の同じ袋に入った粉が音を立て出てきた。

ニヤリと口角を上げながら粉を拾い上げる、そして先程黒尽くめの男から受け取ったジュラルミンケースの中にある金を抜き取り、その箱に粉を詰め蓋を閉めた。


「全く、こいつぁいいぜ」


 ドレッドはこのコピー機を使い、通常精製に長い時間と手間が必要とされる麻薬を無限生産し裏社会で大きく地位と名前を上げていたのだった。

時を同じくして、ギム刑事はとある高級ホテルのロビー受付にいた。


「警察だ」


 ホテルコンシェルジェの女性に警察手帳を突き出しそう呟いた後、何やら小声で会話を交わし合った。


「…303号室です」


 ギム刑事はコンシェルジェの女性からカードキーを受け取るとそそくさとエレベーターに乗り込んだ。

3階に着き303号室のドアを確認すると、静かに腰元から拳銃を取り出し、背中をドアに引っ付け聞き耳を立て始めた。

ドアの中から物音がしないことを確認したギム刑事は先程受け取ったカードキーをドアノブ付近に押し当てた。


”カチャ”


 小さな緑色の丸が光り鍵が解錠された音が聞こえた。

ギム刑事はゆっくりと音を立てないようにドアノブを捻り、銃を部屋の方向に向けながら中に侵入して行った。

顔の前で拳銃を構えながら1歩、また1歩と足音を殺し進んで行く。

だだっ広い部屋の奥にはキングサイズのベッドが置かれ、ソファやTVなどの家具一式も高級感漂うものばかりが置かれている部屋だった。

ギム刑事は拳銃と目線、身体の姿勢を同時に変えながら周囲を見渡すも部屋の中には誰も居ない様子だった、その時、


”キュッ”


 微かではあるが、部屋を入って右手のドアの方向から物音が聞こえた。

ギム刑事はすかさずドアの前に立ち拳銃を構え、声を出した。


「ギルティ!中に居るな?両手を頭の後ろで組んでゆっくりと出て来い!少しでも妙な真似をすれば発砲する!」

「…」

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