お客様5名、無事商品購入
殺し屋のギルティが核兵器を手に入れてからおよそ1時間程度が経過し、オットロを含む6人は建物の入り口付近に集合していた。
「はーい、皆さん。この度は弊社デパートアトランティスでのお買い求め誠にありがとうございますー。ご満足のいくお買い物が出来ましたでしょうか~?」
ギルティとドレッドは手ぶら、ギム刑事と自殺志願者の学生ヨシオは小さい紙袋、難民少女のエリカは大きめの段ボール箱を両腕に抱えていた。
「オイ、エリカ。お前何買いやがったんだ?」
「"天空料理人のオーブンレンジ"ってやつだよー。これすごいんだー。材料なくてもボタン1つで500種類の料理を自動で作ってくれるだってー」
「ったく、食い気の張ったガキだぜ」
「"ハラヘラズの腕輪"ってのと迷ったんだけど、やっぱり美味しい物食べたいからさー」
「エリカちゃん。本当にこの男のところでいいのかい?おじさんがエリカちゃんの入れる施設を紹介してあげるよ?」
「ううん、大丈夫。お兄ちゃんのところがいい」
「…そうか」
ギム刑事は少し心配そうな顔を切り替え、鋭い目線をドレッドに向けた。
「おい、相手は年端もいかない子供だ。くれぐれも丁重に扱えよ」
「うるせぇ!指図してんじゃねーぞコラァ」
「ねぇねぇ、お兄ちゃんは何買ったの?何も持ってないけど」
「自分じゃ運べねぇ物だから宅配便にした。異次元宅配便ってのがあるんだとよ。お前にとっちゃ関係ねーもんだ」
「ふーん」
「オイ小僧、テメェは何買いやがったんだ?透明薬でもかっくらって女の着替えでも覗きまくるのか?」
「え!?え、あ、い、いやぁ、その…」
「貴様こそどうせ犯罪を助長するような下らないものだろな。その下品な頭を散髪してくれる切れ味のいいハサミは売ってなかったのか?」
「あぁ?」
「まぁまぁまぁまぁ~、皆さん落ち着いて~。プライバシーの問題もありますので、詮索はその辺にしておきましょう~」
「そ、そ、そうですよね。ぼ、僕もあまり言いたくないです…」
オットロの制止に自殺志願者の学生ヨシオの言葉が被さったことで3人の口は一様に閉じられた。
「あ!そうだ。皆さんにこちらを渡しておきますねー」
オットロは自分のカバンから小型スイッチの様な物を取り出し5人に1つずつ手渡していった。
それはレストランなどで店員を呼び出す時に使われるスイッチの様な形状をした手の平サイズの機械だった。
「オットロさん、これは?」
「もし何か私に御用等がおありの際にはそちらのスイッチを押して下さい~。今回皆さんは初めての商品ご購入となりますので色々と分からないことも多いかと存じます、なので一定期間ではありますが私にてアフターフォローさせていただきます~」
「なるほど」
「あ、でも手が空いていないときは若干遅れるかもしれませんのであしからず~」
「はーい!」
「それでは皆さん、この度のお付き合いお買い求め、本当にありがとうございました~!またご縁がございましたら是非弊社デパートアトランティスへのご来店を心よりお待ち申し上げております~」
そう言うとオットロはテレポートカードを取り出し5人を元の第7世界地球へと送り届け、再び自身が住む第2世界へと戻って行った。
地球に戻ってきた5人は今になっても少し信じられないといった表情をそれぞれに浮かべていた。
不意にギム刑事が核兵器を手に入れた殺し屋のギルティを睨み、静かに問い掛ける。
「おい。その核兵器、一体何に使うつもりだ?」
「…言う必要はない」
ギルティはそれだけを言い残しその場を去った。
ギム刑事は姿が見えなくなるまでその後姿を睨み続けた。
「おーし、それじゃあ早速帰ってブツを拝ませてもうらおうか」
「うん、帰ろ帰ろー。お腹すいたー。早くこれ使いたいー!」
「ったく、お前いつまで居座る気なんだよ?」
「へへへー」
エリカのあどけない笑顔を見て小さな溜め息をつき歩き始めるドレッドと、その後ろをついていくエリカ。
「おい、覚えておけよ。必ず捕まえてやるからな!」
去り際にドレッドに向かって捨て台詞を吐くギム刑事、ドレッドはそれに反応することなく歩き続けた。
「ぼ、僕も帰ろう」
最後にその場を去るヨシオ。5人はそれぞれの感情と思惑を胸に帰路についたのだった。