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イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる  作者: 和泉 利依
エピローグ

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  登場を知らせるラッパの音と共に教会の扉が開く。一斉に飛び立った白い鳥たちの向こうから現れたのは、純白の衣装に身を包んだテオフィルスとアディの二人だ。

 その姿を一目見ようと教会のまわりに集まった人々から、盛大な歓声があがった。色とりどりの花びらが舞い、白い鳥が空高く飛び交う。


 今日は、キリリシア王国王太子の結婚式だ。


 春、国王に王太子妃として認められたアディは、それから半年後の今日、正式にテオフィルスの妻となった。

「おめでとうございます!」

「おめでとうございます、殿下!」

 祝福の声がいくつも飛び交い、笑顔が広がる。


「ぼんやりしてて転ぶなよ」

 人々にたおやかな笑顔を向けたまま、テオがアディに顔を寄せて耳打ちをした。


「だ、大丈夫です」

「嘘つけ。緊張して足が震えているぞ」

 実際、いつもより底の高い靴を履いたアディは、慣れないドレスに足をとられそうでかなりその足元は怪しかった。

 表面上は睦まじそうに寄り添って、二人は会話を続けた。


「これくらい、たいしたことありませんわ」

「意地っぱり。お前が階段の下まで転がり落ちたら、キリリシアの歴史に名が残るぞ。ああ、それも面白そうだな」

「な……!」

「強がるな。ほら」

 テオが、アディの前に片手を差し出す。ドヤ顔にいくばくかむっとしたアディだが、ここでテオの言う通りに転がり落ちるなんてさすがにごめんだ。


 一見、はにかみながらその手をとったアディの姿に、人々の間からは再び盛大な歓声が上がった。

 長くトレーンをひくドレスに注意しながら、テオフィルスに手を取られてゆっくりとアディは階段を下りていく。その姿に、人々の目が惹きつけられた。


 幾重にも重なった薄いレースは、光を跳ね返すようなまばゆい白。細かく施された金の刺繍に、風に揺れる長いベール。

 式を無事に終えたばかりの興奮で頬をほんのりと染めたアディは、まるで花開いたばかりの百合のように可憐で美しかった。


 二人の結婚は、今まで病弱だと思われていた王太子が、健康上何の問題もなく、しかも極上の美男子だったことを知った国民に大きな衝撃を巻き起こした。もちろん、彼をただの筆頭執事と思ってともに仕事をしていた王宮の人々にとっても、寝耳に水のできごとだ。

 幸せな報告はあっという間に国中に広がり、人々の間では王太子の結婚の話が持ち切りだった。


 その一方で、ネイラー男爵の領地の半分以上が国のものになったという話題も、人々の間を席巻した。通常なら社交界で大きく取り上げられるはずの大事件だったが、王太子の結婚式というさらに大きな話題を前にしてその噂は、あっという間に影をひそめてしまった。


 だからその男爵の独身の娘が一人、僻地にある別荘にひっそりと引きこもってしまったことも、口さがない貴族たちの話題にはほとんどのぼらなかった。彼女の行く末に想いを馳せたのは、せいぜい王太子妃となった元伯爵令嬢と同じく新婚のメイスフィール公爵夫人の二人くらいだっただろう。


 表面には見えないところで、国の中では大きく変わった部分がある。だがそれは、ほとんどの国民の知るところではなかった。国民が知っているのは、若き王太子夫妻がキリリシア王国の未来に向けて歩き出したという、希望に満ちた話題だけだった。


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