表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/72

- 2 -

「かなわねえなあ、アディには。いい嫁さんになるぜ」

 言いながら店主は、アディの持っていた網かごにかぶをいれ、ついでにスーキーの網かごにはおまけのたまねぎを入れてくれた。

「ありがとう、おじさん。またね」

「ああ。来週にはキャベツも安くなるだろうから、また買いに来な!」

「そうするわ」

 アディもキャベツは大好物だ。


「よかったですね、お嬢様。今日は得しちゃいました」

 二人が浮かれた気分で店を後にすると、今度は雑貨屋の親父が気づいて声をかけてくる。


「よう、アディ。まだ油は足りているかい?」

「おかげさまで」

 笑顔で答えたアディに、親父はあたりをうかがうように声をひそめた。


「夏になったら値が上がりそうだから、今のうちに少し多めに用意しとくといいぜ」

「あら、そうなの? 教えてくれてありがと、おじさん。じゃあ、明日にでも買いに来るわ」

「おう、待ってるぜ」


 その後も道々声をかけてくれる街の人々に応えながら、アディはスーキーと二人で帰路についた。

 朝の市で見事な値切りをしていく二人は、すっかり名物になっている。


「今日もいい買い物ができたわね。さあ、帰りましょう。今日はいい天気だし、畑仕事がはかどるわ」

「はい!」

 その時だった。


「てめえ、誰に向かってもの言ってやがる!」

 ばしんと大きな音と共に、大きなだみ声が聞こえた。二人が振り向くと、ガラの悪いごろつきがなにやらどなっている。


「お前には、関係ないだろう!」

 威勢よく返しているのは、鮮やかな金髪にきりりとした顔つきの、一目で貴族のお坊ちゃんとわかる少年だった。どうやら思い切り殴られたらしく片頬が赤くなっているが、びくともせずにりんと背筋を伸ばして男を睨みつけている。その胸には、なぜか紙袋を両手でしっかりと抱え込んでいた。


「うるせえ! さっさとその袋をよこしな!」

「誰がお前なんかに……!」

「ああそうかい、なら腕づくで奪うまでだ!」

 もともと少年の話など聞くつもりのない男が、ぶん、と拳を振り上げた時だった。


「スーキーは、そこらへんに隠れてて」

「お嬢様!?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=933212596&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ