表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる  作者: 和泉 利依
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/72

- 4 -

 呼ばれて、アディは、はっと我に返った。ルースは、他の二人の執事と違って洗練されたリードをとりながらアディと踊っている。


「あなたが見るのは、私です」

 ルースが、ぐい、とアディの腰を抱いた手に力をこめる。さらに体がふれあい、アディの動悸が早くなった。


(あら?)

 熱くなる頬で、アディはふと、気がついた。

 以前パーティーで他の男性とワルツを踊った時は、ここまで密着してはいなかったし、こんな風に指を絡めて繋ぐことはなかった。そう思い出して、アディは他の二人の様子をうかがう。

 やはり、エレオノーラもポーレットも、アディたちほどはくっついてなかった。

 また気もそぞろになったアディの耳元で、ルースは囁くように言った。


「ワルツは、相手との呼吸が大事になるのです。他の男など見ないで……私から、目を逸らさないでください」

 ステップの指導をする時とはまた違う低い声に、アディはそっと視線をあげた。すると、笑みを含んで見下ろすルースと目があう。


「ふふ。暑いのですか?」

「え? いえ……」

「では、そのようにお顔が色づいているのは、私の見間違いですね」

(絶対、わかってやってる!)


 からかわれているのがわかっても、アディには言い返すすべもない。その間にもルースは、巧みにアディをリードしてくるくると舞うように軽やかに踊る。くやしいが、ルースのワルツは文句のつけようもないほど見事だった。さすがは王太子の筆頭執事だと、アディでさえ感心せずにはいられない。


 なぜかルースの意地悪は、アディのみに向けられていた。エレオノーラやポーレットが失敗などしても、アディほどには辛辣な言葉は出てこない。


「私、なにかルースの気に障るようなことでもいたしましたか?」

 沈黙に耐えられなくなったアディが、その疑問をぶつけてみた。

「何故ですか?」

「あの、私ばかりいじ……熱心に指導されているようでしたので……」

 そ、と声をひそめてアディが言った。慎ましい令嬢は、文句を言う時も控えめに言わなければならないのだ。


「私は、ただ優秀な王太子妃を選びたいだけですよ」

「優秀というなら、エレオノーラやポーレットの方がどれほどか優秀です。この上、私に厳しい指導をいただく理由などないのでは?」

 上目遣いに睨んでみると、ルースはにやりと笑って、アディの腰を抱く手に力をこめた。少しだけ身をかがめて、アディの耳元にささやく。


「そうですね。あなたが一番魅力的で男心を誘うから、とは考えませんか?」

「……!」

 予想もしない言葉に驚いたアディの足がからまって、ルースの足を思い切り踏んだ。

「す、すみません!」

「……アデライード様」

 ため息をついたルースの長い指が、アディの細い腰のラインを、つ、と撫で上げる。その感触にアディは、思わず背筋を伸ばした。


「もっと落ち着いて。王太子妃になられるおつもりでしたら、何があっても決して動揺してはなりません。ほら、こうやって背筋を伸ばして」

 今度は講師の口調でルースが言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=933212596&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ