表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/72

- 1 -

 キリリシア王国の王宮では、今夜も華やかなパーティーが開かれていた。


 灯された明かりが、いくつものシャンデリアを通して輝いている。豪華なベルベットのカーテンがかけられた窓の向こうには、やはり庭に灯された明かりがちらほらと美しい。


 細かいレース織りのテーブルクロスの上を見れば、ふんだんに砂糖を使った焼き菓子や幾種類ものサンドイッチが用意され、貴族たちをもてなしていた。

 楽隊の弦の調べは、彼らの会話を邪魔しないように静かに、だが上品に流れていた。


 そこかしこで笑いさざめいている着飾った紳士や淑女は、かなりの数にのぼる。特に今夜はいつもと趣向を変えて、それぞれが仮面をつけて集う仮面舞踏会だ。目元や顔を半分隠した仮面ではその素性を隠しきれるものではないが、それでも、通常よりは開放的な気分の者も多い。


「そう言えば、王宮ではいよいよ王太子妃の選定が行われるのですって」

 きらきらとした雲母を大量に仮面につけた夫人が、思い出した風を装って言い出した。

「まあ。テオフィルス殿下の?」

「ようやく、ですわね」

 別の夫人がさりげなく話に食いつくが、それは今の社交界でもっとも関心を持たれている話題だ。たちまちその話を耳にした婦人たちが群がってくる。


「ええ。何人かのご令嬢のところにお声がかかっているようですけれど……」

 言いよどむ夫人に、他の婦人たちもしたり顔でうなずく。

「あれでは、王太子妃を望む家など見つからないのではありませんの?」

「そうみたいですわね。なんでも、ことごとくお断りをされているとか」

「王太子妃を断るなんて、そんなことあるのですか?」

 すっぽりと頭からかぶる鳥の仮面で顔の上半分を隠した男性が、持っていたワインのグラスをテーブルに置きながら言った。声の調子からして、かなり若い青年らしい。


「まあ、ご存じないの?」

 ここぞとばかりに夫人たちが口を開く。

「今の王太子様はご病弱であられて」

「年の半分は別荘で療養されていて」

「普段王宮にいる時も、離れの宮でほとんど寝たきりだとか」

「あれでは、王太子としての務めを果たせるのかどうか……」

「それに、ほら、もうすぐテオフィルス殿下も二十五歳ですし」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=933212596&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ