さらなる異能
ここまでで、俺は自分の異能がどんなものかを理解した。植物の特性を変更することと、植物を自在に成長させることのようだ。多分、毒を持たせることとかもできるだろうし、成長させることができるならば枯れさせることもできるだろう。過剰に成長させれば、行き着く先は枯死だ。
そんなことを考えていると、ホワイトタイガーから次のリクエストが来た。
――して、少々渇えてきたぞ。
「は、お待ちください」
ここで三つ目の異能に気付いた。地球にいた頃は植物の種類なぞとんとわからない都会っ子だったのが、今では周囲にある全ての植物を見分けることができた。しかもその中から、役立ちそうなものを選別できた。
ここらに生えていたアボカドもどきの木に巻き付いた瓢箪を見分け、それが役に立つと直感した。
俺は立ち上がり、瓢箪を手にとった。
中には一応果肉があり、種がある。それらを取り除いてからでないと容器にはできない。果肉は腐るととても臭い。薬品でなければ匂いは落ちないほどだ。
それらの特徴を知りながら、人間に都合よく変えていく。
それは最初から水に満ちている。それは瓢箪自身によって濾過された飲用に耐えうる物で、種は実の底の方に、しかも外から底を砕いて取り出せる。種を取り除いた後の底は平らになり、瓢箪のくせに立たせることができる。最早瓢箪と呼んでいいものかどうかわかならい代物だ。
そうやって情報を操作した瓢箪を蔓からちぎり、さきほどのアボカドもどきと同様に地に埋める。
「生えよ」
大地の中で根が伸びる感触がある。それは地下水脈を探り当て、そこから急激に水を吸い上げる。地上では蔓が伸び、アボカドもどきに巻き付き、いくつもの瓢箪を実らせた。成長が止まる。重みに耐えかねて勝手に瓢箪がちぎれて地に落ちた。
それを拾い、口をへし折ってわずかに見える中を見る。ちゃぽちゃぽと水音がする。思い切って飲んでみる。清涼な、気温と同じぬるい水だった。水道に慣らされた人間ならばともかく、野生動物ならば最高の温度設定だろう。
「これなら大丈夫だ」
そう思って振り向いたが、ホワイトタイガーは不満そうだ。
――どうやって飲めと言うのだ。
あー、器がいったか。
今回の開発種
水瓢箪(瓢箪から開発)
最初から飲料水が入った状態で実が成る。実が熟すと勝手に蔓から落ちるようになっている。
口は手で折れるくらいに脆くなっており、ペットボトルのように水を飲むことができる。
飲み終えた後は普通の瓢箪のように、水分の運搬保存に使えるが、蓋を別途つけなければならないだろう。