気がつくとジャングル
目を覚ましてガバっと体を起こす。
不快でない程度に湿った温かい風が腕や胸をなでていく。
どこまでも続くジャングルの中に、岩でできた高台があり、その中腹の洞窟の入り口あたりに俺ことモリタケはいた。脚や腰の下には、苔生した土の感触。多分、背中にもついているんだろう。
グルルルルル――。
振り向くと、ホワイトタイガーと目があった。
「わっ」
驚いたが、不快だった訳ではない。こんなにホワイトタイガーの顔を間近に見たことがなかったからだ。普通はないだろうが。せいぜい動物園の飼育員くらいだろうか。
「ガゥ」
ホワイトタガーが軽く吠える。
――起きたか。
頭の中に意味が聞こえてきた。
「……え、今の、君が?」
「ガゥゥ」
――その通りだ、下僕よ。
「あ、はい」
猫に下僕呼ばわりされてついうっかり肯定してしまった。
――妾は下僕にさせたいことがあって、こちらに呼び寄せた。
「こちらと申しますと」
ホワイトタイガーの持つイメージが伝わってくる。およそ半径200キロ以上の楕円形のジャングルだ。ここはそのほぼ中心にある、ホワイトタイガーの巣であった。
――これこそが妾の領域にして、妾の子等の安住の地。いや、これからそうなるべき土地なのだ。
さらにイメージが流れ込んでくる。
戦乱。使い潰される猫耳や犬耳やその他の獣人たち。人の都合で獣人たちが戦場で殺し合わなければならなくなった。悲嘆と悲惨、血と鉄と炎、涙と叫び。傷つきながらも逃げ出す獣人たち。ホワイトタイガーは、それを憂えていた。
――下僕よ。妾の子等に、安住の地を用意せよ。
「御意です白虎様。――とは言え、ただの人間に何ができましょうか」
――案ずるな、下僕よ。
ホワイトタイガーは、振り向き、かたわらに生っていた果実を口でもいだ。匂いに顔をしかめているが、なんとかそれを運び、俺はそれを両手で受け取った。
――触ればわかる。そして知りたいと念じよ。