表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しあわせと呼ばれた人  作者: なつのいろ
7/40



 サイガは改めてベッドの中の青い顔をしたコチョウを見、心配そうに眉を下げた。



「顔色が悪い。薬はちゃんと飲んでいるか」



 その問いに曖昧に頷いてみせたコチョウは、ぱくぱくと口を動かして先日の買い物のことを伝えようとする。しばらく首を傾げていたサイガは、やっと思い当たって小さく微笑んだ。



「気にするなと言っただろう。とにかく今はゆっくり休め」



 何か話したいことがあったはずのサイガは、また来るとだけ告げてあっさり帰って行った。彼の背中の向こうで煩わしそうに彼を睨んでいたカトレアは、彼が後ろを振り向くとすぐに微笑み愛想よく外へ案内をした。優しい方だなとほっと心を温めていたコチョウは、やがて部屋に戻ってきた義姉に布団を剥ぎ取られベッドから突き落とされた。



「ああ汚い、全部全部洗濯してちょうだい!」



 勢いよく絨毯の上に落ちたコチョウはその衝撃にぐにゃっと目が回り、ついに体力の限界を迎えそのまま意識を手放した。




 次に目を覚ました時、コチョウは暖炉のある部屋の隅っこに薄い布を一枚被って転がされていた。ようやく朝日が昇ったくらいの時刻だろうか、部屋は薄暗く暖炉の火は消えているが、まだほんのりと空気は暖かい。コチョウは、昨日よりもいくらかましになっている体調にほっとしながら上半身を起こした。昨日サイガに会ったことだけは覚えているが、そこから先の記憶がなかった。いつもならコチョウの部屋として当てがわれている屋根裏部屋に放り込まれていたところだが、さすがに死なれては困ると考えたのか、あそこまで運ぶのが手間だったのか。コチョウは一晩だけでも隙間風の入らない部屋に置いてもらえたことに感謝した。



――でも、あのまま死んでしまってもよかったのに。



 虚ろな目でそんなことを考えて、コチョウはもそもそと動き出した。昨日は何も出来なかったので、やらなければならないことはたくさん溜まっている。ひとまず今、やるべきことをやろう。これからのことは、それが終わってから。コチョウは重い体を動かして、着替えるために屋根裏部屋へと向かった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ