22
コチョウは、何かひんやりしたものが額に触れたのを感じてふと目を覚ました。全身が倦怠感に襲われていて、頭がぼうっと熱を持っているのが自分でも分かる。重い瞼をこじ開けた彼女は自分が今どこにいるのか把握出来ず、靄がかかったようにぼんやりしている記憶を辿ろうとした。
「ーー起きたか」
知らない男の声がして、コチョウは驚いて身体を震わせた。怯えたことを察したのか、男は安心させるように俺は医者だと言った。
「おまえさんは今熱が出て寝込んでる。水、飲めるか」
男の白衣越しに見えるのは、今までにコチョウが見たとこもないような高級そうな調度品を備え付けた立派な部屋。そこでようやく、コチョウは自分が城に連れてこられたことを思い出した。急に喉の渇きを覚えて男が手にしている水差しに目をやると、身体を起こしてそれを飲ませてくれる。その手つきがとても手慣れていて、コチョウはこの人は本当に医者なのだなと少しほっとした。何か食べられるかと聞かれたが、到底喉を通りそうになく力なく首を振る。
「いろいろあるだろうが、今はとにかく休め」
コチョウはここ数日の出来事を思い返しかけて、しかし上手く考えることが出来ずにすぐに止める。じわじわと睡魔が襲ってきて、やがて泥のように深い眠りに落ちた。そんな彼女を、男ーーマキタ医師は苦い顔で見守った。布団に隠された彼女の手足には、相変わらず白い包帯が巻かれている。その下にどす黒く変色した鬱血痕と擦過傷があることは、彼とアリシア、彼女の世話をしている数人の侍女、そしてアリソン王しか知らない。後ろ手にきつく拘束していたのだろうそれは、これまでちゃんと彼女を人として扱っていたのかさえも怪しまれた。
「・・・・・・悪趣味にもほどがあるってんだ」
布団を掛け直してやりながら、彼はそのあまりに薄すぎる肩に舌打ちをする。おそらく心因性のものであろう高熱のせいで、彼が見ている限り彼女はこの数日何も口にしていない。まだそう年端もいかぬ少女がこんな扱いをされていることが、不憫でならなかった。




