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――花の貴方へ
そう始まる手紙は、要点だけを書き留めたとても短いものだった。リアンは大事そうにその手紙を胸元に仕舞い込み、次の日の午後、ひっそり街へと降りて行った。
そして夕方、昨日のアリシアと同じように神妙な顔をして城に帰ってきたリアンは、その足で巷で女性たちに大人気の飲食店を匿名で予約した。お腹いっぱい食べてくるんですよと言い聞かせる彼の目にはうっすら涙の膜が張っていたとかいなかったとか。ともかくそんなこんなで、アリシアはいつものように魔法で変装して街中に繰り出していた。
「本当に迷惑じゃなかったかなあ・・・・・・」
外套に身を包み浮かない顔で目的の店へ向かうアリシアは、そもそもあの子は来てくれるだろうか、やはり押し付けがましくなかっただろうかという不安に襲われていた。店の近くでうろうろそわそわしながら待ち人を待つ少年に通りがかる人々から微笑ましげな視線が投げ掛けられていることに、本人だけが全く気付かない。
いよいよ約束の時刻になった時、店の中から制服を着た店員らしき女性が出てきてアリシアに声を掛けた。
「ある方にこれを渡すように頼まれていて。貴方が、ええっと、花束の人ですよね?」
「えっ。えーっと、たぶん、僕のことかな?」
ふふ、と口元に手を当てて笑った彼女は、アリシアに一通の手紙を差し出した。シンプルな白い封筒には、見覚えのある筆跡で花の貴方へと書かれている。アリシアはしばらくそれを眺めた後、お礼を言って封を開いた。




