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スキルとフレンド


「アイザック、一匹見えたぜ」


 森の中で試し切り相手を探していた俺達の前に、一匹のモンスターが現れた。

 つぶらな瞳に大きな口。頭の上には緑の葉っぱが付いていて、顔は瑞々しい赤。その下に小さな体が付いている二頭身のモンスターだ。名前はトマッシュというらしい。


「俺トマトあんまり好きじゃないんだよね」

「神経への伝達感度下げれば大丈夫だろ」

「それもそうか。で、アイザック隊長作戦は?」

「俺がリーチを活かして牽制するから、後は流れで適当に」

「完璧な作戦だな」

「だろ?」


 二人で顔を合わせて軽く笑い合う。

 こいつとはなかなか気が合いそうだ。


 俺とクロウは小細工なしで正面から突撃した。

 こちらに気付いた敵のトマッシュも向かってくる。しかし足が短く非常に遅い。


「ハッ!」


 ちょっと可哀相そうだが、まずは様子見で一突き。

 直撃した相手はトマトマ鳴き声を上げて少しひるむが、そのまま向かってくる。


 そこに横からクロウが一撃、二撃、速さを活かして切りつける。

 二人の連撃を受けたトマッシュは短い断末魔を上げて消えていった。

 なんか地味に鳴き声が可愛いかったな。ちょっと罪悪感あるわ。


「楽勝だぜ」

「……だな、でも武器を作ってなかったら無傷とまでは行かなかったかもな」


 戦利品はトマッシュの果実と二十ブロンズだ。


「なぁアイザック。経験値が手に入らないんだけど」

「このゲームは各種スキルと装備だけで強化していくから、いわゆるレベルの概念はないぞ」

「そうなの!?」

「電子説明書読んでないのか」

「俺あーいうの一切見ないタイプ」


 あぁ確かに、短い付き合いだがクロウはそんなタイプだ。


「じゃあ最強武器があれば、初心者でも無双できるのか?」

「そうかもしれんな。装備制限なんて筋力くらいだからな」

「いいねぇそういうの。俺好みだ」


 何をもって最強かは置いておくとして、このゲームは武器ならば誰かが作らないといけない。

 いわゆる聖剣みたいな武器を作るのに、一体どれくらいの時間がかかるんだろうか……。


「なぁなぁ、武器以外にも攻撃用のスキルが作れたよな?」

「あぁそうだな。何匹か狩ってマスタリーが上がったら作ってみるか」

「よっしゃ、じゃんじゃん狩ろうぜ」



 その後は二人でトマッシュを狩りつつ、採取も行うことにした。


 二人ということもあり、かなりのペースで狩りは進む。

 採取では薬草とキノコがたくさん手に入った。

 クロウは火を付けるのに使えそうな火打石まで拾ってきたのだが、一体どこまで行ったのだろうか。



「キノコにトマッシュの果実、食材が多めに手に入ったのはいいな」

「いいからスキル作成しようぜ」


 どうやら彼は食い気よりスキルのようだ。

 戦利品を確認する時間すらおしいらしい。


「そうだな作ってみるか」


 近くにあった大岩の下に腰を下ろし、二人でスキルを作成する。


 槍マスタリーは四貯まっているな。これを全て使ってスキルを作成してみるか。

 手数重視や対空攻撃みたいなワードをスキル作成時に入力すると、それに応じたスキルをAIが考えて自動で作ってくれるみたいだ。

 とりあえず今回はキーワード無しで作成してみよう。


 少しの間を置いて完成したスキルが表示される。

 出来たスキルは、端的に言うと「追加攻撃力一、槍で広範囲をなぎ払う」というものだ。というかスキルの名前は自分で付けるのか。



「短剣を投擲するスキルが出来たぞ。……微妙なスキルだ」

「大丈夫だクロウ、金さえ払えばスキルはリセットできるらしい」

「なるほど、じゃあリセットしてもう一回だ。カッコイイ技、と」


 あー、見た目も重要だな。なんせ格好いいとテンションが上がる。これは男にとって重要だ。

 俺もリセットするか。範囲攻撃はソロなら有用かもしれないが、序盤でかつパーティーなら出番は薄いだろうしな。


 金を百ブロンズ払ってリセットし、もう一度スキルを作成した。今度は威力重視のキーワードだ。

 できたスキルは「追加攻撃力五、少し溜めてから思いっきり相手を突く」というスキル。

 うん、これなら使いやすそうだ。




「ようし、出来たぞ。俺の華麗なるスキルを見てろよ」


 そう言って立ち上がったクロウは、短刀を逆手に構えて真剣な目つきになった。


「行くぜ!」


 クロウのナイフが高速に動き、空を切る。

 その白刃の軌跡は空中に弧を描き、短時間だが光るエフェクトを残した。



「おー、すごい。まるで月を描いてるみたいだ」

「それだ、ナイスアイザック。このスキルの名前は『月光』だ」


 嬉しそうなドヤ顔を見せるクロウ。



「いいんじゃないか。ちょっと厨二臭いのもおまえに合ってるぞ」

「そ、そうか。ただ高速で切り返すだけのスキルなんだけどな」

「短剣向けで、使いやすそうないいスキルじゃないか」


「素直に褒められると照れるな……。おまえのも見せてみろよ」

「オーケー、使ってみよう」


 両手で長槍を持ち、低く構えてスキルを使用した。

 少し後ろに引いて溜めを作り、右足で踏み込みながら前方に高速で突き出す。さらに風を切るエフェクトと効果音のおまけ付きだ。


「おーすげぇ、硬い敵に効きそう。でも格好良さなら僅差で俺のほうが上だな」

「そうか、まぁそういうことにしといてやる。名前はあっさりと……『スラスト』でいいか」


 初期で獲得できるスキルにしてはできがいい。他にどんなスキルがあるか楽しみだ。

 今度は十ポイントくらい一気に使ってスキルを作成しても面白いかもしれないな。



 これで二人ともスキルを習得した。消費MPも少なめだし、これなら少し遠出もできるだろう。

 うんうん。これぞRPGの楽しみの一つだ。





「初めての武器にスキル、なかなかいいものが作れたな。このゲームの出だしとしては上々だろう」

「そうだな、でも俺はそれよりもっといいものが作れたぜ」


 ……こいつはこの短時間でまた何か作ったのか。


「他には何を作ったんだ?」

「ふっふっふ、それはなぁ……」


 わざとらしく貯めを作るクロウ。

 そして、俺のほうをビシッと指差した。


「素晴らしいフレンドだ!」


 ……あぁそういうことか。

 よくもこんなこっ恥ずかしいことを素で言えるもんだ。ある意味尊敬する。


「まだフレンド申請してないけどな」

「そういうことじゃなくってさぁ!」


「分かってる、分かってるって」

「ハハハハ、嬉しそうな顔しやがって」

「してないから」


 言いながらクロウはバンバンと肩を叩いてくる。


「や、止めろよ。恥ずかしいなぁ」

「このあとめちゃくちゃフレンド登録した」


 自分でそれ言うのか、全く面白いやつだ……。



 もちろんフレンド登録はその後でちゃんとした。




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