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吸血鬼だってチーレムしたい  作者: もこもこ
帝国貴族を目指す生活
43/63

第43話 お酒は二十歳になってから

 

 Aランクモンスターを圧倒した。


 人を超える銀虎、希少なヒーラーの中でも、最上位のフルキュア使い、そして、吸血鬼。

 人数は少ないが、1人、1人が強力だ。

 マリオンも、シルヴィアも最近調子が良くなってるんですよね、と言っていたし、上り調子かも知れない。


 気力は十分。

 体力だってほとんど消耗していないが、ここは温泉地だ。

 もう一泊してから次の作戦を立てることになっている。


(けど、Sランクは流石に怖いなあ)


 火山から帰った時点で体は汗だくのドロドロ。

 すぐに温泉に入ったが、今、マリオンとシルヴィアは二人でマッサージに言っている。

 エステになるのだろうか。

 体をほぐしながら、肌が綺麗になるんですよ、見違えますね、と出て行った。


 温泉は楽しいが、1人だと流石に時間を持て余す。


「んー、暇だなあ。どうしよう」


 ぷらぷらと宿を歩き回りながらどうしようかと悩む。

 屋敷ひとつ分より広く、マッサージや温泉以外にも射的や、チェスのようなボードゲームなども用意されているが、さすがに見知らぬ他人とやりたい気持ちは特に湧いてこなかった。


「なら私と付き合ってはもらえないか」

「え?」


 後ろを振り向くとそこには以前温泉で見かけた水色の髪のエルフが立っていた。

 エルフだけあると言っていいのかわからないが、この世界に来る前に抱いていたエルフに近く、人形のように整っており、ほくろもシミも全く無く肌は薄っすらと桃色だ。

 子供扱いしているのかどこか可愛い物を見る目で、目尻が下がっており、優しげだ。


「リーゼだ。大ヒトカゲを倒したんだって? すごいな。良かったら一緒に飲まないか? 美味しいところを知ってる」

「俺はリオンです。リーザさんも冒険者?」


 ただ、彼女からはさほど鍛えている人間らしさを感じない。

 マリオンと同じ後衛だろうか。とはいえ、背筋が伸び、挙動ひとつひとつが美しく、もうだいぶ会えていない母親を思い出す。


(貴族の令嬢っぽい、のかな)


 なんだか懐かしい気持ちになったこともあり、誘いに乗ることにする。


「いいですよ。でも、お酒はあんまり飲んだことないから酔っちゃうかも」

「大丈夫だ。なら、飲み方も教えよう」


 ナンパになるんだろうか。

 だが、リーゼの目が優しげで弟あたりを見る目だったし、そもそも、いつもマリオンと一緒にいるせいか、俺に声をかける女性はいない。


 まあ、外に出る時はローブを被って顔も隠している。

 そんな相手に冒険者以外で声をかける相手もいないのだが。


 懐かしい気持ちになる相手であったこともあるし、あんまりと言ったが、実際は飲んだことのない酒にウキウキした気持ちになる。


 マリオンも特段飲みたいと言い出すこともなかったし、大人になってからという気持ちもあって飲む機会がなかった。


 --


「おや、リーゼさん、久しぶりですね」

「マスター。今日はハントできた。彼と一緒に飲もうと思って。かわいいだろう? 奥空いてるかな」

「ええ、空いてますよ」


 案内されたのは雰囲気のいいバーだった。ゆったりした雰囲気があり、貴族が来ているのか、席はいくつか埋まっているがどこも穏やかに会話を楽しんでおり、美人なリーゼが入ってきても冷やかすような男はいなかった。


「なんだか雰囲気がいいところだね」

「そうだろう。私は温泉に来た時は必ずここに顔をだすことにしている。普段は1人なんだけど、人寂しくて、ね。暇しててくれて助かった」

「こんないいところ案内してもらえるなんて思わなかった」


「ここのマスターは見る目があるんだ。それに観光地だから色んなお酒を揃えている。

 名前を言ってもどんなものかわからないだろうから、マスターに任せてみないか? 

 好みの酒にあたったらそう伝えれば好きそうなのを選んでくれる」

「なるほど。それはいいですね。じゃあそれで」


 最初に出てきたのはカクテルだろうか。ピンク色で綺麗だ。

 グラスも冷やされているのか、温泉あがりのほてった体にはちょうどいい。

 飲み口はチョコレートのように甘く優しい。


「これ、美味しいですね」

「ああ、それは良かった。ルシアンという甘いお酒なんだが、だったらカルーア・ミルクなんかもいける口かもな」

「あはは。バーでミルクなんて子供みたいです」

「いいじゃないか。可愛くて。それに、立派にお酒さ」

「ええ。じゃあ、試しに」


 リーゼとマスターのチョイスが良いのか、どの酒もおいしく飲みやすい。

 美人と飲んでいるという事実や、妙に褒める彼女に気が大きくなったのか、ついつい、酒に手が伸びパカパカと開けてしまう。


 ああ、なんだか気分がイイなあ。


 --


「そりぇでですね。えーと、どこまで話しましたっけ?」

「ああ、吸血鬼の力で大ヒトカゲを倒したところまでだ」


「そーでした! りーぜしゃんは吸血鬼すきですかー?」

「吸血鬼はさておき、君のことは大好きだ」


「わあい」

「君とは話が弾むな。どうだい、よかったら私の部屋でもっと話さないか?」


「ええー、いいですよォ。もっと話したいですぅ」


 そんな感じのことを話していたのを覚えている。


「リーゼしゃーん」

「リ、リオン。いきなりだなんて!」


「いいですかぁ」

「あ、ああ。初めてだが、頼む」


 こんなこともあったかもしれない。


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