第25話 冒険者ギルドで出会ったほんとはAなBランク
「やっと到着したね。まずはどうしようか? 宿を抑えに行く?」
「いえ、まずは換金に行きましょう。いえを家を借りてから冒険者ギルドで登録に行きましょう」
アウグルクリス帝国は俺が今まで住んでいたエティリア王国と違い、多種族国家だ。
人種と言っても、亜人……エルフやドワーフ、ホビットなどである。
別に祖国をかばうわけではないが、エティリア王国で亜人差別が強いというよりは、そもそも亜人が住んでいた地域に帝国ができただけだ。
ただ、多種族が生活しているためか、雑多というか、建つ家ひとつひとつの素材や色はバラバラだし、あたりにたくさんので店が出て、近くを通るとすぐに宣伝が始まる。
だいぶ活気がいい街だ。正直元気に気圧されそうなくらいである。
「冒険者ギルド!?」
「食いつきますね。リオンさんも男の子だったということでしょうか」
「まあ、お父様がアレだからね。俺だって、みたいな気持ちはあるよ」
「キラキラさせてますねえ。……そういえばリオンさんって何歳でしたっけ? 私よりは下なんでしょうけど」
前世でそもそもマリオンと同じくらいだったので、今も合わせれば逆に心は年上だ。
子どもと思っていいのか、大人なのか、体に引っ張られていることもあり、お子様だった時は心も若かった気がする。
なにが自分にとって本当の年齢かわからないので、意識もしていなかった。
「多分もう6歳かなぁ」
「16歳ですか。14歳くらいだと思ってました」
「いや、6歳だよ。オーブのせいで成長しちゃったんだ」
「ほ、ほう……10歳下でしたか、そうですか。でも、6歳というのは見た目から無理がありますから、14歳にしておきましょうよ」
俺としても、体にあった年齢が一番違和感がないし、周りから見ておかしくないくらいがいいだろう。年齢確認なんて遊園地でも行かないと意識もしないだろうが。
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馬車に大量に積まれていた金銀財宝は換金、マリオンに言われるがままに、馬車も置ける屋敷を半年の契約で借りることにした。
うまく活動していけるなら購入も視野にいれつつ、何かがあれば置いて逃げることになる。半年分も出しておいて逃げるのはもったいないので、しっかりと気をつけていかなきゃいけないだろう。
「やあお嬢さんたち! この灼熱のタカシと一緒にパーティーを組まないかい?」
「きゃー! 疾風のサトウ、すてきよ!」
「紫電のタカシ様! こっち向いて!」
「土壁のタカちゃんはBランク新鋭冒険者なのよ! 彼に誘われるなんて光栄ね!」
……二つ名くらいはひとつに統一してほしい。
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曇りのためか、昼が過ぎているのにあたりは鞍目だ。身な冒険に出ているのか、人はまばらで、隙をつくように俺たちはギルドの受付に顔を出したのだ。
登録用の用紙に、年齢を14歳、名前をただのリオンとして記入すると、名前と、ランクのDという文字が書かれたカードを貰う。
「マリオンは……Bなんだ」
「まあ、ヒーラーでしたから、甘めなんですけどね。Dがその日暮らし、Cが慣れ始め、Bが一人前で、Aが凄腕、Sが化物か英雄って感じですかね。リオンさんはSになりましょうね」
「う、うーん。まあ、そのうちね?」
怖いことを言っているマリオンだが、Sランクという響きには琴線が振れるものがある。
そうでなくとも、Bと共にいるDランクは完全に足手まといの構図なので、まずはBになりたいところ。
ボードにはたくさんの依頼が貼り付けられている。
とは言え、依頼の張替えは主に朝されるらしくて、今はもうめぼしい依頼は取り終わっているらしい。
そうやって二人でどんな依頼がいいかを眺めていた時だった。
ツンツンと立った黒髪の男に声をかけられた。
彼の周りには三人の少女が囲んでおり、冒険者ギルドにいるのが不思議なくらい、鎧でも、軽装の防具でもなくただの衣服を身に着けていた。
中にはスカートの子もおり、森でも歩けばボロボロになりそうなカッコだ。
「私は二人でやるつもりですから大丈夫ですよ。見た目よりは強いんですよ」
「強いと言ってもヒーラーなんだろ。光と闇の属性を探してたんだ。二人なんてあぶないだろう? 俺が守ってやるぜ。遠慮するなよ。なにせ、ランクはまだBだけど、なりたてだからってだけだ。実力ならAと言ってもいいくらいだ」
「はあ。無理をする気はありませんから、Aランク相当というなら逆に過剰です。申し訳ありませんが、お互いの条件が合いそうにありませんね」
「いやいやいや。俺の条件は君の条件。なんだって合わせるつもりさ」
「……もう、リオンさん、連れが他人に誘われているのになにかないんですか?」
段々とめんそくささが表情に出てきている。
何かを期待するようにちらっちらとこちらを見てくるマリオン。
とはいえ、俺も彼のことは気になっている。
【さとう たかし】
どう考えても日本人名だからだ。鼻は低いし、顔はやや平べったい。
なにより、その黒髪と目。懐かしい雰囲気のクラスには一人いたお調子者の人間だった。
転移者。俺がないのだから彼もチートなんてないのかもしれないが、少なくとも、BだかAになれそうなくらい強いのだ。正直言えばあまり関わりたい相手じゃない。
でも、馴れ馴れしくマリオンを誘すその姿は不快だった。
「……はあ。断られてるんだからいい加減にしなよ。彼女は俺と組んでるんだ」
「なんだ、男だったのかよ……期待しちゃったじゃねーか。ふっ、ということはお嬢様とフラグをたてるための障害ってことか」
「なに言ってるかわかんないけど、アンタとは組まない」
「お前、ランクいくつだよ」
「――Dだよ。なったばかりだからな」
「初心者かよ。お前みたいなのじゃあの子に怪我させちゃうぜ! ――いいぜ、冒険者ってもの教えてやる!」
「だから、組まないって!」
「ガキが遠慮すんなよ! 俺と一緒なら成長早いぜ!」
お嬢様との出会いだの、フラグだの、こいつ、ゲームか何かのつもりだ。
確かに、なにも知らずにこの世界に転移してきて、戦闘にも困らずうまくやれたやつならこんな風になるかもしれない。
女の子をはべらせて、守ってやると豪語できるのがその証拠だ。
断っているのに、肩を抱いてハッハッハと笑う。
「よし! 一緒にゴブリンを退治に行こうぜ。ゴブリンを倒せればCなんてすぐだからなー」
剥がそうとしても、A間近は伊達じゃないのか、手の力だけではされるがままだった。
ブラッドモードをオンにすればいくらでもやりようがあるだろうが、魔術もなしとなると、単純な筋力になってしまう。
肩を組む男二人の後ろを女性たちをぞろぞろと引き連れながら森に向かうという不思議な絵面のまま、俺達は初めての冒険を開始することになった。




