あ、これあかんパターンや
「アウレリア! 貴様との婚約を破棄する!」
俺は血管が爆ぜそうな勢いで、喚き散らした。
そこで、ふと何故か違和感を覚えて我に返る。
俺の立っている場所は、周囲より高い場所で、そこから下を見下ろせば、何やら多くの時代錯誤な西洋風の衣装で着飾った10代後半の男女が訝しげにこちらを見上げている。
そして最前列では、気の強さがその顔に出ている身分の高そうな金髪ドリルの少女が険しい表情でこちらを睨み付けている。
俺がさっき喚き散らした相手のアウレリアだ。
自分の傍に気配を感じて見れば、俺は一人の華奢な少女を抱きしめるように、その肩に手を回していた。
他にもこの壇上には、何人かの生徒がいて、アウレリアに対する糾弾が続いている。
「アウレリア・シファーレン侯爵令嬢。貴女は殿下の婚約者という立場を利用して、身分に関わりなく平等であるべき学園の秩序を乱し権力を振りかざした。
そして多くの貴族令嬢を扇動し、弱き者、力無き者を迫害し、国の未来に将来貢献するだろう才能溢れる若い芽を自分の身勝手な理由で害しようとした。
国の利益を考えない、その傲慢不遜な態度は、もはや看過できぬ、と、殿下もお考えだ」
俺の言葉を代弁する形で、こう言い放ったのは、同級生で宰相の息子のリドル。バーレル侯爵子息の長子であるが、言っている事がおかしい。
身分に関わりなく平等であるはずの学園に、王族や貴族、一部の裕福な商人の関係者しか通っていない事実からして推して知るべし、というものだ。
今更何を言っている?
「逆らう事も出来ないような者に対して、卑怯な行いを重ね、恥ずかしくはないのか?」
近衛騎士団長の息子で学園の風紀を取り締まる役職を担っているマーカスも、アウレリアに対して辛辣な言葉を投げつける。
ちょっと待て、君なんでこっちにいるの?
君はこの事態を鎮静化させる立場だよね?
「お前には愛想もつきた。もう兄でもなければ妹でもない!勘当だ!」
ちよっ、ちょっ!お兄様、貴方身内でしょ? 何糾弾する側に立っているの? ほらとりなすとかさ? やらなくちゃいけない事があるんじゃないの?
それに勘当処分とか勝手に口走っているけど、そういうの当主の権限だから。
いかに次期当主確定の身分でも出来ないから。
むしろ越権行為で君が糾弾されちゃうから!
「君があんな事をしていただなんて、がっかりだよ。神も御許しにならないだろう」
いや、ガッカリはお前だ!
ちゃんと裏を取って物を言ってるのか?
君は自分の影響力を軽く見過ぎだから?
君が黒って言ったら、白い物も黒くなるんだから!
発言はよく考えろって周囲からも言われていたよね?
ローヴァン次期祭祀長!
他にもチャラい奴とか双子の豪商子息とかが口々にアウレリアを責めたてた。