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伝言

作者: ぐめら

 ある日、孫が通学中に校門前で倒れた。


 原因は不明。

 よくよく聞いてみると、本人には以前から左半身にしびれのような不快感があったらしい。が、今どきの中学生らしくネットでいろいろと調べてみて、何らかの重大な病状ではないかと怖くなり、両親にも黙っていたそうだ。

 しかし誰の目にもわかる症状が現れたからには、病院で検査をすることとなる。


 おもな症状は半身のしびれと不眠。


 まずは、脳神経の検査から。最新の検査機器を用いた診察でも原因はわからなかった。

 それでもあきらめられるはずもなく、人脈を駆使して、その道の名医と呼ばれる人に診断を依頼した。本来ならば3か月待ちといわれたが、無理を言って何とか診てもらったのだ。

 しかし原因はわからなかった。


 こうなると精神科の問題ではないかといわれた。

 確かに孫は受験生である。未来への不安、もしも失敗したならという重圧はあったのかもしれない。

 とにかく不眠は命に係わるほど重度であり、睡眠薬を処方される。

 人間は眠れなければ死ぬのだ。

 しかし、カウンセリングを受けているうちに、より一層病状は悪くなるようだった。むしろ、「お前は精神に疾患を抱えているのだ」と言い聞かされているように感じられた。


 その間に、孫は高校受験を終え、中学を卒業した。

 それらを行うには、周りの学友たちの暖かな手助けがあった。

 移動に際しては彼らが両脇を支えるようにして助けてくれていたのだ。


 そのようにして日々は流れていったが、回復の兆しは見えぬままであった。

 鬱々と過ごしつつ日常を送り、いつものように図書館の書棚の間を歩いていると、ふとある本が目に入った。すこしでも何かないものかと手に取り、熟読し、藁にも縋る思いでカイロプラクティックを試した。


 結論を言えば、たった3回の施術で、不眠は解消された。


 施術者によると、延髄のあたりが明らかに腫れていたらしい。その腫れにより脳幹が圧迫されて、半身のしびれ、果ては不眠に至っていたそうだ。

 最新の診断装置を使って何故にわからなかったのかというと、ちょうど画像では写りにくい位置、つまり頭を見る機器と全身を見る機器との丁度境目のあたりに患部があったらしい。

 最新技術の盲点であったようだ。


 同様の症状で原因不明の不眠を抱え苦しむ人があったならば、この話をそっと伝えてくれまいか。

 聞いた話によると、現在若者の間に同様の症状が広がっているそうだ。

 長時間のパソコンやスマホの操作に、姿勢が固定されて、首への負担が大きくなっているせいではないかといわれている。

 もちろん体質もあるだろうし、その他の要因もあるだろう。もしかしたら本当に未知の病状なのかもしれないが、「最新医療」に拘らずに整体で症状が緩和されることもあるかもしれない。


 孫は無事、高校の入学式を迎え、現在は元気に過ごしている。

 もし、卒業式の様子を見ていた人から話を聞いたならば、そのように伝えておいてほしい。

 あの子はもう、心配いらないと。未来へと歩き出したと。

聞いた話を筆者なりに理解して文章にしました。

実生活では彼の言葉を伝える相手は現れないかもしれませんので。

これを読んだ方の心の片隅にでも置いておいていただければ幸いです。

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