「G」襲来
「うわぁぁぁぁっ!」
「どうしたんですかぁ? 会長ぉー」
「トモっ! アレっ! アレなんとかしろっ!」
「アレって……うわぁぁっ……」
放課後、いつものように、僕と小夜子会長、そして優子ちゃんと、三人で生徒会室でのんびりと過ごしていた。
「おいトモっ! さっちゅんは運動部の助っ人で遅れてくるのはいつものことだけど、ゆかりんがまだ来てないじゃないかっ! おまえまた変なことでもしたのかぁ?」
「会長っ、変なことって何ですかー……由加里ちゃんは一年生のクラス委員会の後に来るって、今朝言ってたじゃありませんかぁ……」
「そいえばそんなこと言ってたなぁ……」
そんな、いつもと同じ平和な生徒会室を、突然一匹の物体が襲来した。
これは……世間で言うところの「G」という生物……正式名称はチャバネなんとか……出来ることなら思い出したくもない名前だ。
「トモっ! はっ……早く……あれなんとかしろっ!」
「ぼっ……僕だってあれ嫌ですよっ!」
「うっさいっ! おまえ男だろっ! あんな小っちゃな虫怖がってどうすんだよっ!」
「だっ……だって「G」ですよぉ……茶色い羽根と長い触覚な物体ですよぉ」
そうこう言ってる中、「G」がコソコソ動き出し、優子ちゃんの方へ向かう。
「きゃぁぁぁっ!」
「ゆっ……優子ちゃんっ!」
「トモくん助けてっ!」
僕は優子ちゃんを護ろうと必死だった……のだが……
「トモくん……あの……」
「ゆっ……優子ちゃん……えーと……その……」
「おいっ! トモっ! おまえ何どさくさに紛れて優子の手握ってるんだっ!」
「いっ……いや……これは……その……」
その間も「G」が生徒会室の壁の隅をカサカサと、しかしもの凄い速さで動き回る。
「トモっ! 早いとこコイツをぶっ潰せよっ!」
「会長っ! なんで僕なんですか……」
そうこうしているうちに、さっちゅん先輩が到着する。
「ちーっす! みんなー、元気してるー?」
「さっ……さっちゅん先輩っ……ちょうど良かった……アレ……何とかしてくださいよぉ……」
「なんだトモっち……って……いやぁぁぁぁぁっ!」
「さっちゅん先輩っ、何ですか、いきなり叫んだりして」
「トモっち、あたいアレ大嫌いなんだっ! なんとかしてっ!」
「なんとかって言っても~……僕もアレ嫌ですよぉ~……」
そんな中、一年生の委員会を終えた由加里ちゃんが生徒会室に入ってくる。
「どうしたんですかぁー……先輩方みんな揃って大騒ぎして」
「由加里ちゃんっ! そこ……危ないから」
僕が言うと
「なーんだ、ゴ○ブリですか-」
「ゆっ……由加里ちゃん……それフルネームで言うかなぁ……」
「えっ? だってゴキ○リはゴキブ○じゃないですかぁ?」
「いやぁ……女の子なんだからさぁ……せめて別の言い方とか……」
「まったくー、トモ先輩は男子なのに情けないですねぇー、ほれっ!」
そう言って、「G」なる物体を一撃で潰した。
「由加里ちゃん……凄いなぁ……」
「トモ……おまえ、なんかとてつもなく立場ないぞ……」
小夜子会長からのきつい一言が僕に突き刺さる。
しかし、由加里ちゃんが「G」を潰すのに使った「物」が問題だった……
「由加里ちゃん……それ……僕の下敷きなんだけど……」
「あっ……えーと……トモ先輩、洗えばなんとかなりますよ」
「いやっ……もういいですよぉ……どうせ買い換えるつもりだったし……」
昭和五十九年五月……初夏を感じる頃、今日も賑やかな生徒会室です。
久々にドタバタな話を書きました。お楽しみいただけましたでしょうか?
やっぱり、七高生徒会はこういうノリでないとね。