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生徒会S59(せいとかいえすごーきゅう)――あのゆるふわな僕の日常――  作者: 私市よしみ
第七章 生徒会の「活動」昭和五十八年度・三学期
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特別な日……

「今日も相変わらず寒いなぁ……」

 三学期が始まって数日……今日も僕はいつものように生徒会室へ向かう。

 ただ、ここ数日は小夜子会長も、優子ちゃんも、さっちゅん先輩も、なんだか様子がおかしい。僕の前でコソコソと何か隠し事をしているかのようだ。

 もしかして僕……生徒会役員の中でもただひとりの男子だし……まさか裏では仲間はずれにされているのか……あまりそういうことは考えたくないが……


「おつかれさまでーす」

 今日も僕がいつものように生徒会室に入る。すると、


「ヤバっ……トモ来ちゃったよ……」

 小夜子会長が僕を見るなり何かを隠した。優子ちゃんも、さっちゅん先輩も、何か慌てた様子だ。


 僕は思い切って小夜子会長に聴くことにする。

「会長、最近僕に何か隠し事しているでしょ?」

 僕が小夜子会長に言うと、


「なっ……なんでもないっ……なんでもないぞ……そうそう、優子、トモにお茶淹れてやれ」

 小夜子会長はそう言って、まさに言葉通りにお茶を濁した。


「優子ちゃーん、何か僕に隠してませんかぁ?」

「トモくん、そんなことより……お茶冷めちゃうわよ」

 優子ちゃんもなんだか様子が怪しい。


「さっちゅん先輩~……僕を抱っこしていいから……何か教えてよぉ~」

「えっ、トモっち抱っこしていいのっ? あっ……でもー……やっぱいいや」

 さっちゅん先輩も絶対僕に何か隠してる。


「なんかみんなぁ~……僕に隠し事とかしてませんかぁ?」

 僕は彼女たちがコソコソ何かをしていることがどうにも気になって仕方がない。


「あっ、そうだ……トモ、あさっての月曜日は休みだけど生徒会室に来いよ!」

「会長……あさってって……成人の日の振替休日で学校休みですよねぇ……何か特別なこととかやるんですかぁ?」

 僕は優子ちゃんの淹れてくれたお茶を口にしながらも、会長の言葉が気になる。


「トモ、世の中にはあまり気にしない方がいいこともあるんだぞ」

「会長、気にしない方がいいって……そんなこと言われるとますます気になるじゃないですかぁ……」

 気にするなと言われて、気にしない人はいないと思うのだが……


「トモくん、お茶のおかわりいかが?」

 いつの間にか僕の手元のティーカップは空になっていた。

「あっ……いただきます……優子ちゃん……」

 優子ちゃんはいつも通りに、ティーカップに手際よく紅茶を淹れてくれた。

 気が付くと、いつの間にかいつもの生徒会室の雰囲気になっていた。

 


 そして、月曜日の一月十六日……本来は成人の日の振替休日で学校は休みなのだが……小夜子会長に「生徒会室に来るように」と言われたので、休みにもかかわらず学校に行く。


 休日ということで、バスの時刻もいつもと違ってるので、なんだなか違和感もある。運動部の部員は休みの日でも学校に来ていることもあるが……生徒会役員は本来ならば休みのはずだ。

 まあ、小夜子会長が学校に来いというのだから、生徒会役員である僕も行かないわけにはいかないのだが……どうも小夜子会長の意図がよくわからない。


 そして、僕は不安になりながらも生徒会室に入る……


「……あのー……僕ですけど……入りますよぉ……」

 僕が恐る恐る生徒会室に入ると、


「パーン」「パーン」

 いきなりの炸裂音、そして僕に紙テープや紙吹雪が降りかかる。


「トモっ! はっぴーばーすでーなのだっ!」

「トモくん、お誕生日おめでとう」

「トモっち、誕生日おめでとー」


 僕はあまりに予想外な出来事に呆気にとられる。

 そして、生徒会室の黒板には『トモくん お誕生日おめでとう!』と大きな文字で書かれていた。部屋の中も紙テープや折り紙なのか、カラフルに飾り付けがされている。


「みんな……これって……」

「いやー……おまえ今日誕生日だからな……」

 小夜子会長が照れくさそうに言う。


 一月十六日……そうだ……僕の誕生日……すっかり忘れてた……


「トモっ! んなとこに突っ立ってないで早く座れよ! 今日の主役はおまえなんだしなっ!」

 いつもの丸テーブルの、いつも僕が座る席の前には、丸いケーキが置かれていた。そして、ケーキの上にはローソクが十六本……


「トモくん、一気に吹き消さないとね」

「トモっち、ふぁいとだー」

 優子ちゃんも、さっちゅん先輩も笑顔で僕を見つめる。


「ほれ、ふーっとやるんだ! ふーっとなっ!」

 小夜子会長が僕にローソクを吹き消すように促す。


「それじゃ、いきますよ! ふーーっ……」

 僕はなんとか十六本のローソクを消すことができた。


「パチパチパチパチ……」

 三人の女の子たちの祝福の拍手が生徒会室に響き渡る。


「みんな……ありがとう……ありがとうございます」



 昭和五十九年一月十六日……僕、津島友樹は十六歳になりました。

 というわけで……トモくんの誕生日のエピソードでした。

 トモくんはいわゆる「早生まれ」だったりします。だからというわけではないのですが、同学年の他の生徒よりちょっと幼いところがあったりします。

 にしてもまあ、お正月に続いて女の子たちに祝福されるトモくんが羨ましいぞ☆

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