9、街へ行こう!
………。
…眩しいなぁ。
私は、朝日で目が覚めた。
そういや元いた世界じゃ、遮光カーテン愛用してたもんな。
夜バイトしてると、昼夜逆転してるようなものだから、朝日は大敵だった。
そう、ドラキュラ並みに。
長い髪を、わしわししながら起き上がる。
色はピンク色。流石ファンタジー。
「お、起きたね、アイリ。」
朝チュンではないが、ティークが言うと、シャレに聞こえん…。
ぼーっとしてたら、昨日ジャムモドキを作った土器に、水を入れて渡してくれた。
「あ…、ありがとう。」
両手で受け取って、こくこく。
ティークは、荷物をまとめている。
「変わった格好だね、可愛いけど。」
おお、反応があった。
「驚かないの?」
「昨日嫌というほど驚いてるから、それほどでも。一番驚いたのは、アイリを拾った時。」
失礼な、物じゃないぞ。
私が返した土器もしまって、荷物を二つに分けたティークは、それを背負う。
…凄く…江戸時代です…。
一応護身用らしき剣を持っていたけど、それに荷物をくくりつけて、肩に担いだからだ。
てかね、いる時にすぐ抜けなくちゃ、護身用とは言えないと思うの。
と、ティークに言ったら。
「もうすぐ街だから、何も出ないよ。」
だそうな。
道なき道を、下草を踏みしめて進む。
てか、足が痛い。主に足の裏。
裸足、超痛い。
「ティーク、ティーク、靴欲しい。」
「靴?って、なぁに?」
「足にはくもの。」
「金持ちの王族なら、してるかもな。」
どんなけー…。
あれはないのか、これはないのか、とこの際だから、ティークに聞いてみる。
判定…食材は、ほぼあった。
調味料はない。塩なら、ある。
ただ、材料があっても、それをどうこうしたってのは少ないらしい。
砂糖は、あの黒糖モドキがあるだけだそうな。
衣類は…ほぼない。
みなさん、腰巻き胸巻きなのか!と言ったら。
「うん、そう。」
脱力しました…。
まず、針がなかった。
布を織る技術はあるのに、縫う技術がないとは、これいかに。
少し偉い(王族とか)とかだと、大きな布に穴を開けて、そこから頭を通し、腰を革紐で縛る。
だそうだ。
何処の貫頭衣かなー、ははは…。
ナイフや剣を作る技術があるんだ。
きっと針も作れる。
そしたら、服を流行らせてやろう。
そうこうしていたら、大きな木製の門が見えてきた。
「さて、どうしようかな。」
「どうしたの?」
「アイリのその耳。」
あぁ、隠せってことか。
昨日、この世界にはいない種だって言ってたものね。
尻尾は幸いなことに、パレオモドキで隠れて見えない。
腰に巻いてた布を解き、頭に巻いて髪も押し込む。
「これで、どう?」
「うん、いい感じ。」
ちょっとやそっとでは、動じないティークもいい感じ。
門の所には、剣を持った人が二人立っていた。
ティークを見て、何も言わずに通してくれた所を見ると、よほど顔見知りらしい。
「着いたよ、アイリ。ボクの住む街へようこそ。」