7、なんとなんとの
「アイリ。」
うーん、でも…。
「お願い、アイリ。」
そんなこと、言われても…。
「ね?アイリ?」
現在、絶賛交渉中である…。
何かって?
それは…。
私が何処から来たのか。
早い話が、ティークは気がついていたのである。
私が、この世界の住人の生まれではないことを。
「…もう、分かったわよ。けど、信じる?」
「信じるよ。アイリが最初に持ってたその板…この世界に無い金属だったし。」
あら、そうでしたか。
私が見ると、スチール板を赤紫色に塗装しただけの、金属カードにしか見えないんですけどね。
「分かった…、じゃあ、話すね。」
私は一から説明を始めた。
自分が居た所は、『地球』の『日本』と言われる所であること。
そこは、こことは何もかもが違う…異世界であること。
その『日本』では、ここよりずっとずっと文化が発展していること。
「飛行機って言う、空を飛ぶ金属の塊があるよ。」
と教えたら、物凄くビビられた。
ただ、私は原理がさっぱりなので、作れと言われても無理だが。
「そうか…じゃあ、アイリが居た所には、魔族も獣人もいないんだ。」
「うん、想像上にはいるけど、現実にはいないよ。」
もちろん、ご飯が美味しいことも、服と言われる身体を覆うものがあることも教えた。これ大事。
さて、向こうの世界を教えたのなら。
「ねぇ、ティーク、この世界のことも教えて?」
「うん、もちろん。」
ゆっくりとティークも教えてくれた。
「あれ」が教えてくれたことも含めてだ。
この世界は、様々な種族がいること。
ティークはもちろん人間族だが、魔族、獣族、はたまたエルフ族。
まさにファンタジー。
「私は獣族?」
と聞いたら。
「獣族に、アイリみたいなのはいないよ。何処にも属さないんじゃない?」
だから、変だと思ってたんだって。
よくそんなのを、倒れているからといって、介抱してみたりするよなぁ…。
日本で自分が倒れてたら、写メられた挙句に、無視される自信がある。
ティークは、種族を研究する人らしい。
「変わり者って言われるけどね。」
だそうだ。
なにせ種族間の対立が激しいこの世界。
それを調べるティークは、奇人変人にされてるらしい…。
食事情は、さっきので嫌という程理解した。
ついでに、着るものに関しても。
後は…。
「ティーク、魔物は?」
「何それ?」
でした。襲うようなのは、野生の狼や熊などの獰猛なヤツだけ。
余程山奥か、里に降りてきた個体か。
ここら辺なら、まず大丈夫、と太鼓判を押された。
そんなこんなを話込んでいるうちに、辺りは薄暗くなっていく。
夜が来るのだ。
そこら辺は、何処の世界も変わらないのだろう。
ただ、そこには、日本では見れないものがあった。
空に、星は全くなかった。
満月のような、淡い光を放つ何かと。
赤い光を放つ何かと、漆黒で覆われていた。
大きな赤い月と、白い月があるようで、なんか見慣れない。
「あーあ、すっかり話し込んじゃいましたね。」
敷物の上で伸びをして、ティークはそのまま仰向けに倒れ込んだ。
ティーク…危ないです…その…色々と…。
あえて言うなら、見えそうです!
「もう、今日はここでもう一泊しますか!」
「それはいいけど…食料は?水は?」
それは、大事です。
「水は、魔法で出せるから、大丈夫。食料は…ないけど。」
どうもあれで最後だったらしい。
「本当は、今日中に帰り着けるはずだったんだけどね。」
そりゃ、失礼しました。
夜は冷えるから、と敷物以外の布も出してくれた。
フェルトのような、ちょっとゴワゴワな厚手の布。
「ねぇ、ティーク…。」
「ん?」
「あるなら最初から出そうね?」
ついでににっこり。
「…はい。」
そうしたら、添い寝事件は起きなかったと思うの。
あぁ、ティークが固定キャラになって行く…。
もしかしたら、この話、書き直すかもしれません。