6、まずは目の前の物を
はーい、クッキングの時間だよ〜♪
今日の材料は…。
固い干し肉(スルメ級)
小麦粉の塊(味なし)
塩(粉末)
リンゴ(スカスカ)
水(常温)
の四つでーす。
道具は…。
スルメも切れちゃうナイフ(指切り注意!)
そこら辺で拾った石(表面は滑らかで平ら)
丼っぽい入れ物(はっきり言って土器)
でーす♪
アイリちゃん、がんばっちゃうもんね!
さて、真面目にやろう。
なんだかんだで、ティークは説得した。
「本当に出来るの?」
多少不安げではあるが…。
なにせ、材料がそれしか無い。
バターだの砂糖だのは、望むだけ無駄なのだ。
だったら、原始的ではあるけれど、やれるだけやってみるしかあるまい。
まずは、小麦粉を固めた物体を、水で少しずつ溶き伸ばす。
塊が残らないように、ゆっくりゆっくり。
そして、塩を投入。
なめらかーに溶けた物を、まだ燃えていた焚き火で温めた石の上に広げる。
これで放っておいて大丈夫。
スルメ肉は、ティークに薄切りにしてもらって、塩をぱらぱら。
その辺の小枝さんに刺して、火で炙る。
これまた、放置。
リンゴ…。
「なんか、甘い物、無いかなぁ…。」
思わず声に出てしまう。
「甘い物…?」
ティークがはっとしたように、荷物を漁っている。
「あった、これ、甘いよ。」
渡された物は、布に包まれていた。
開いてみると…茶色い塊。
端をちょっと摘まんで、食べてみる。
あっまぁ〜…。
他の味もするけど、気にする程では無い。
ちょこっと削って、スライスしたリンゴに振りかける。
え?皮?
一緒に美味しく頂く気ですが、何か?
焚き火の隅の方に、土器土器さんを置いて、砂糖モドキを振ったリンゴを入れる。
待つ。
暫く待つ。
水分が出て来るまで待って、小枝で混ぜながら、ちょっと煮込む。
煮込みながら、ティークに聞いてみたら、この砂糖モドキは黒糖だった。
いや、黒糖よりか、もっと原液に近い物だった。
「甘い液体が出る草を絞って、その汁を固めて、乾燥させた物。」
らしいので。
混ぜるのを代わってもらって、放置していた物を見に行く。
石の上のクレープモドキは乾いていた。
いい感じである。
お肉も火が通ったようだった。
お皿なぞ望めないので、そこらの大きな葉っぱを代用する。
「これを、こうして…。」
焼けたクレープモドキに、リンゴジャムモドキをのせて、巻き巻き。
お肉は、そのまま。
「はい、食べてみてね。」
最初に、ティークに。
毒味させているわけでは無い、決して。
恐る恐る口にしたティークが、目を丸くした。
成功かな。
自分も食べてみる。
うん、そこそこだ。
なにせ、塩しか入ってないクレープモドキ。
食感も味も、本物には程遠い。
それでも、中に入れたリンゴジャムモドキが、凝縮されたリンゴの味と、仄かな甘みで、それを多少カバーしている。
スルメ級に固かったお肉は、火を通したおかげで柔らかい。
塩味もついて、バッチリ。
ただ、元々が脂の少ないお肉だったのか、ジューシーさには欠ける。
それでも、スルメ級を噛み締めるよりか、余程美味しかった。
「アイリ、アイリ、なんでこんなこと出来るの?それとおかわりしていい?」
ティークが…、ティークが、仔犬に見えたよ、ははは…。
「こんなんで…よかったら、どうぞ。」
なんで?と言われても〜。
まさか異世界で覚えました!なんて言えませんわよ、ははは…。
ティークはその後、土器のジャムモドキが無くなるまで食べ続け、最後には、クレープモドキで拭って食べていた。
あんまり美味しそうに食べるので、私はお肉だけ齧って、お腹を膨らませておいた。
ごちそうさま。
リンゴをどうするか、最後まで迷ったよ…
PVが千越えました。
自分が一番ビビってます。
小心者です。
ブックマークしてくれた方、読んでくれている皆様に感謝を!
ありがとうございます!