5、食べられる、何か
目の前に置かれた物は、数種類。
白い物(塊)と、白い物(粉末)と、赤い物(果物ちっく)と、赤い物(塊)、である。
赤い塊は、お肉らしい。
見た目がそうっぽいので、そう判断しておこう。
白い塊は、全くもって謎のまま。
ゴツゴツしてて、岩のようである。
白い粉末は、謎のお薬か!と思ったら、塩だった。
食べ方が分からずに、まごまごしていたら。
「はい。」
と、お肉を半分に切って渡された。
そのままかい!
仕方がないので、齧りついてみる…。
齧りついて…。
齧り…。
固い!
よくこんな物が切れたな。
てか、普通に齧ってますよ、ティーク凄い。
固さはそう、スルメと同じ。
干したんだろうな、と想像はつく。
しかし、想像して欲しい。
厚さが三センチ位ある、スルメ。
噛めるかい!齧りつけるかい!
噛むことも、齧りつくこともままならず、四苦八苦してたら、ティークは、笑いながら、白い塊も分けてくれた。
これは、それほど固くなかった。
ただ、死ぬほど不味かった。
材料は小麦粉っぽい物だろう。
それをただ捏ねて…いや、捏ねてすらいなさそう。
水を入れて、まとめて、半乾きにしました!みたいな物体。
ティークを見ていると、塩を舐めてから、白い塊を齧っている。
あぁ、味無いものね…と妙に納得してしまう。
真似をしてみたが、不味いことに変わりはなかった。
塩、めっちゃしょっぱい。
赤い果物は、リンゴっぽかった。
ただ、スカスカしてた。味はぼやけていて薄い。
どれもこれも手をつけてみて、私は唖然としていた。
これが…ご飯…。
自分は今、究極に、この世界に来たことを、後悔している。
こういっちゃあ、なんだが、自分は料理は大好きだった。
フランス料理のフルコース!とか言われたら無理だが、大抵の料理は作ることが出来た。
勿論、お菓子も。
裁縫もそれなりに出来た。
コスプレ衣装を作っていたくらいだし、洋裁も和裁もついでに編み物も出来た。
服は布切れ、料理は、辛うじて食べられる何か。
そんなのは…。
そんなのは…、許せる訳が無いっ!
たとえだ、たとえ、これが旅行用の携帯食だったとしても。
もっと、こう…あるだろっ!
皆月 愛理、18歳。
お父さん、お母さん、ごめんなさい。
どうも日本には、帰れそうもありません。
この世界に…料理と言う名のご飯と、裁縫と呼ばれる服を教え込むまでは!
「アイリー、食べないの?」
何処からか響く呑気なティークの声を聞きながら、私はそう決心した。
もっとも、獣人の自分は、帰ったら大騒ぎだろうし、「あれ」にも帰れないって言われちゃっているんだけどね。
ようやくタイトルに追いついた…。