36、ちーと
「…まだ…入る…。」
「わいのは、あと少しである!」
やっぱり持ってた、魔法の収納。
ただし、カルバさんとリィンちゃんだけだったが。
この収納の魔法、使える人は少ないそうな。
使えても、せいぜい数種類とか、数個とか。
そんな訳で、カルバさんのもすごいのだが、リィちゃんは更に凄い。
もうね、チートだよね。
リィンちゃんは、私が作ったピンクのフリルワンピースが気に入ったようである。
他にも何着か作って渡したが、ピンク系の服を好んで着ていた。
ああ、かわいい。
目の保養。
容量の多い調味料や小麦粉、お米なんかは、収納で持っていってもらうことにした。
空いた隙間に、焼き貯めたお菓子を積み込む。
「これとこれもお願いしますわ。」
…ジレさんはお酒らしい。
彼女は、ミニスカのようなキュロット。
あの斧を振り回すので、スカートがはけずに悲しい思いをしていたらしい。
そんな服あったな、と思いつつ、試作したら物凄く感謝された。
女の子だもんね、かわいい服着たいよね。
しかし…セクシー路線の人がいないのは、なんでだろう…。
子供だからぺったんなリィンちゃんと、年の割には慎ましい大きさのジレさん。
…あれか?私がセクシー路線か?
「アイリさん、今何かおっしゃいました?」
「いいえ。」
ジレさん、鋭いわ。
流石にもう無理なのか、馬車への積み込みが始まった。
それでも、少ない。
野営用のテントに、毛布、いくつかの箱。
…あれは、試作したコンソメだな。
中にもクッションと座布団が入れられる。
「よし、出発!」
馬車の中には、私、ハート、ジレさん、ティーク。
今回、御者は雇ったようだ。
窓から覗いていると、動き出した馬車に合わせて、カルバさんとリィンちゃんがとんっと地面を蹴った。
ふわりと羽が広がる。
この魔法も、チート臭いな…。
しかし…。
……ごめんなさい、カルバさんに羽があるとか、どんな悪夢ですか…。
隣でも、「あれは無しよね…。」とジレさんが呟いていた。
リィンちゃんはスカートがめくれないように、何か魔法をかけたようだ。
一台と二人は、出来うる限りのスピードで、獣族の国へ向かう。
もっとも、二人はもっと早く飛べるらしいけど。
私なんかより、よっぽどチートな二人組なのでした。
ジレさんの怪力も、よく考えたらチートだよね。




