35、容量オーバー
「…リィン。」
「わいか?わいは、カルバである!」
「紹介になってません。私はジレと申します。」
件の三人である。
ついでに目の前には、山の様に積まれたお皿がある。
よく崩れないな…、というか、材料持つんだろうか…。
リィンちゃんは、6歳くらいの女の子。
よくいる茶髪に、茶色い目の可愛らしい子だったのだが…。
とにかく食べる。
食べ続ける。
このお皿の山を築いているのも、彼女である。
カルバさんは…言っては悪いが、おっさん。
筋肉ムキムキな上、スキンヘッドで凶悪な人相で…。
一瞬引いた。
だが、リィンちゃんが懐いているあたり、悪い人ではないんだろう。
そして、お皿の山に加担し続けている。
最後のジレさんは、ツインドリルのおねーさま。
優雅に食後のお茶を飲んでいる。
うん、一番まともそう。
食べた量もまともだったし。
しかし、背中に背負っている巨大な斧が、実に合っていないのだが。
ああ、何という異世界テンプレ。
ティークとハートの獲物は、剣。
ティークに聞いたら、リィンちゃんは魔法、カルバさんは魔法と棒の混合、ジレさんは…言わずとも知れている。
食料が…間に合わないかも…。
「このお菓子、なかなか美味しいですわね、リィン。」
「そうであるな、お代わりをいただきたいのである!」
「あなたには聞いてませんわ!」
「ん…。」
ほぼ無言で、もきゅもきゅと食べるリィンちゃんがとてもかわいい。
ぜひぜひ、フリルたっぷりの服を着せたい。
「食材がもうありません〜。」
悲鳴のような声が厨房から聞こえてきた。
お菓子の追加分を持って来ておいて、正解だったのかもしれない。
「…おいしい。」
もきゅもきゅなリィンちゃんのためにも…。
「さて。」
食事も終わって、最後まで崩れずに持ちこたえたお皿たちも片付けて。
リィンちゃんは、まだもきゅもきゅとホットケーキを食べてはいるが。
「今回の獣族との戦いだが…、1対1で戦い、勝ち数の多い方を勝利とする。
大将はボク、取り決めだと、三人目が魔法使い対決だから、リィンは三人目だね。」
「…ん。」
「一人目はハート、二人目がジレ、で、四人目がカルバ。取り決めに沿うと、これで決まりかな。」
先鋒、ハート。(剣技)
次峰、ジレさん。(力比べ)
中堅、リィンちゃん。(魔法)
副将、カルバさん。(複合)
大将、ティーク。(総合)
といった所か。
副将と大将が被っている気もするが。
「決着が、つかなかったら?」
「勝負方法は、その場で決めるけど…、恐らくは、五人で乱闘。」
被害が大きそうだ。
「分かりましたわ。」
「うむ、了解なのだ。」
「…。」
リィンちゃん、ホットケーキ気に入ったんだろうか…。
まだ食べてる…。
「出発までは、ここに泊まって。2、3日で出発の予定だから。」
その間に、食材を積み込むのだろう。
リィンちゃんとカルバさんは乗らずに、飛んでいくらしい。
「じゃあ、食材を仕入れる。」
カルバさんとリィンちゃん。
この二人の分だけ、増やさなきゃ。




