23、布×針×糸=?
ちくちく。
ちくちく。
ちくちくちく。
私は今、真剣だ…。
ちくちく。
ちくちく。
ちくちくちく。
「…出来た。」
ノッピィさんが、精魂込めて作ってくれた針で、初めて私が作った物。
それは…。
ぱんつ。
笑うなよ!
なにせ、服が布なこの世界。
下着なんて物は、皆無で…。
上は兎も角、下がすーすーするのは、どうしても落ち着かなかったのだ。
とはいえ、元いた世界の様な、伸縮性に富んだ生地はない。
立体的に縫うのも、なかなか厳しい。
そこで、作り上げたのは。
かぼちゃぱんつ。
ドロワーズとか言われる、あれだ。
ぬいぐるみの服を、無駄に作っていたのが幸いした。
ゴム紐はないので、布で作った紐を通す羽目になってでも、だ。
もちろん、ちゃんとしっぽを通す穴も開けておいた。
素材は、綿で、色も白。
「ほわぁ…。」
はくと、とりあえず安心できる。
これで布の端がめくれ上がっても、見えない。
それだけで、安心。
「さて…。」
一枚だと困るから、あと少なくとも二枚は縫わなきゃな。
布を切るのは、ノッピィさんに貰った短剣。
こんな役立て方をしていい物か悩んだが、他に切れる物が無かったから、仕方が無い。
二枚目を切るべく、私は布に立ち向かう…。
パンツを作って、数週間後。
私は、次なる物を作り上げた。
ワンピース。
これで…やっと…。
やっと服が着れる…!
たとえそれが、ちょっと縫い目が曲がっていようとも。
布を巻いているよりは、幸せだ…。
四季がないこの辺りは、腕や足を出していても、寒くなかった。
なので、袖はない。
それに袖を作るとなったら、また時間がかかりそうだしね。
ノースリーブで、切り替えのないすとんとしたワンピースは、腰に布で作ったリボンがついていて、背中で結ぶようになっている。
胸にも、飾りのリボンがついていて、丈は短め。
ドロワーズが見えないギリギリだ。
…布がなかったの!
白しかないかと思っていた布は、色のついたのもあった。
流石に、染色の知識は無かったので、これは助かった。
無かったら…植物とかで染める、怪しい知識を披露する羽目になるとこだった。
紅花とか、藍とか…。
あ、ワンピースの色は、無難な紺です。
リボンだけ、白で。
メイドさんチックになってしまったが、気にしない。
やっと出来たワンピースを着て、ティークとダニィさんの前でくるりと回る。
「わぁ、かわいい。」
「ほう!凄いですな。」
二人とも、興味津々だ。
「これは、女性が着る物だから…、男性のも、また作るね。」
流石に縫い物が続くのは、疲れる。
「うんうん、楽しみに待ってる。」
もう多少の事では驚かなくなった二人も凄いな。
「お店の方も、もうじき完成しますし…。楽しみが増えますな。」
おお!お店出来るんだ。出来ちゃうんだ…。
あと二着くらい、服縫いたいけど、そんな暇あるかなぁ?
「アイリ、アイリ。」
「なぁに?」
びっくりしてくれたのかな?
「今夜は、ステーキと、パンがいい。」
「………。」
ティークのご飯の催促に、無言で対抗する、私なのでした…。