22、宴会、えんかい
折角ドワーフさんを招待したので。
ダニィさんは、狩りに出かけた。
私はもらった針を大事に自分の部屋に置いてから、剣を腰に下げた。
そうする為のホルダーがついていたからだ。
もらった物を身につけないのは、折角作ってくれた人に失礼だしね。
そんな訳で、つけてみたんだが…、物凄く軽かった。
短いのを加味しても、だ。
改めて凄い素材で出来ている事を理解してしまう。
普通に作ったら、値段がつけられないって、ダニィさんも言ってたしな。
とりあえず、ノッピィさんに出す、お酒を取りに、貯蔵庫へ。
持って帰ってもらう分とは別に、リンゴを漬けていた分を探し出す。
これを瓶に詰めて、ノッピィさんの元へ。
ノッピィさんの相手は、ティークがしていた。
簡単な料理は出していたので、カップと共にお酒を持っていく。
「ノッピィさん、これ飲んでみて下さい。」
立ち昇る匂いに、ノッピィさんが鼻をひくひくさせた。
「お?こりゃドワーフのやつより、いい匂いがするな。」
「ドワーフのって?」
「おぉ、ドワーフの作るエールに似た匂いだが、それより強いような…。」
私が渡したカップに鼻を近づけて、匂いを嗅いでから、ノッピィさんは一気に煽った。
「おぉ!こりゃ強いな。」
喉を焼いたであろうアルコールに、少しだけ顔を顰める。
「しかし、美味いの。」
「まだありますので、どうぞ。」
持ってきた瓶を、ノッピィさんの方に押しやった。
「ほう!美味い!」
「アイリ、また新しいの作ったんだね。これ美味しい。」
「今回のは、ピザと言う物です。」
ここ数日の間に、ティークとダニィさんはオーブン窯を作ってくれていた。
試運転も兼ねて焼いたピザは、ソースとチーズだけのシンプルな物だったけどね。
「こんな美味い物を食わせてもらえるなら、ここへ通うかな。」
「あ、それなら、その内店を出すので、そこへ通って下さいな。」
さりげなく、宣伝しておく。
「そうか。この飯と、嬢ちゃんの容姿があれば、この大陸のどこからでも人は来るだろうな。」
何杯めになるか分からないお酒を空けて、ノッピィさんが笑った。
もう面倒なので、樽ごとお酒は引っ張り出してきた。
「へ?」
「あ、そうか。」
ティークが分かったと言うような顔をする。
「アイリは可愛いからね。」
「は?」
ティークの目は腐っているに違いない。
普通、見慣れない姿の人って、普通警戒しませんか?
「ま、坊主も苦労が絶えなくなるってこった。」
また笑うノッピィさん。
私が来て、初めてのお客様を迎えた宴会は、楽しく過ぎて行く。
次の日、二日酔いにまたなるティークやダニィさんと。
お土産のブランデーに、小躍りしそうなくらい喜んでいたノッピィさんとで。
後日、エールはどんな物なのか、気になったので、聞いてみた。
ようは、甘酒とどぶろくを、足して二で割ったような物だった。
アルコールは弱め。
それでも、あれだけの蒸留酒を飲んで、酔い潰れなかったノッピィさんは、流石と言うべきか。