19、爆発は、浪漫です
狩ってきてくれた兎は、血抜きも解体も、ダニィさんとティークがしてくれました。
毛皮は貯めておくらしい。
水加減はばっちりだったけど、火加減がちょっと失敗して、お焦げが増えたご飯と。
兎肉と玉ねぎと人参とじゃがいものホワイトシチューが、晩御飯でした。
ちゃんと人参らしい人参と、じゃがいもらしいじゃがいももあったので。
どうもティークは、変わり者と思われているようで。
目先の変わった物は、食べてみたいし、見てみたい。
それが、白い人参や、赤いじゃがいもだったようで…。
普通って、大事だと思うの。
もちろん、兎肉は、普通の物でした。
変な兎じゃなくて良かったよ、本当。
シチューのお代わりは、無くなるまで続いたのは、言うまでもなく。
ご飯も空になったことも付け加えておく。
さて、現在の私と言えば…。
天然酵母を作るべく、魔力を込めてます。
発酵に魔法が使えた時は、びっくりしたけど、よく考えたら、イメージな訳だから。
イメージしたら、きっとできるだろう、という安易な考えで挑んだ味噌が上手く行ったので、今度は酵母にチャレンジしている訳で…。
こぽこぽ。
お、いい調子。
こぽこぽ。
うーん、もうちょいかな…。
こぽこぽ…。
お!
次の瞬間、かなり激しい音がした。
どかーんとか、ばきーんとか、がきゃーんとか、そんな類な音。
「アイリっ!」
「何事ですか!」
血相を変えた二人が飛び込んで来た先には、発酵し掛けたフルーツを、頭の上からかぶった私がいたとだけ、伝えておく。
味噌で成功したからと言って、甘くはなかったようだ…。
爆笑するティークと、若干引きつった顔のダニィさん。
掃除?自分でしましたよ、ええ。
掃除機をイメージした、謎の魔法でね。
天然酵母は、その後何度も魔力発酵で挑戦したんだけども。
全て爆発させました。
その度に、ティークが飛んで来て、ダニィさんの顔が青ざめていた、うん。
大人しく、魔力無しで作成。
ただ単に、魔力を込め忘れて、放置されていたのが、上手くいったなんて、言える訳がない。
私の魔法は、不思議だと、ティークは言う。
発酵然り、掃除然り。
そんな魔法が使える人は、見たことがないと。
ある意味、チートスキルか。
地味なチートだなぁ…。
コンロの火力調整も、泡立ても、イメージが大事なんだろうな…。
そんな事を考えながら、今日も魔力発酵に依る爆発を、続けている自分なのでした。
「アイリさん…。」
ダニィさんが、若干呆れた顔をしているけども。
被害は、私と部屋だけなんだから、いいではないか。
部屋は毎回掃除しているし。
爆発は浪漫だと、誰かも言っていたし。
「アイリ…。」
毎回懲りずに飛んで来るティークも凄いと思うんだけどなぁ…。
夢は、魔力発酵酵母である。
目標は高く持たなきゃね、うん。