1、どうしてこうなった
彼女は、広い草原を前に、ただただボー然としていた。
ラノベ風に書いたら、こんな感じじゃないだろうか。
私はぺたんと座り込んだまま、辺りを見回す。
目の前には、草原が広がっている。
とりあえず、ここはどこ?私は誰?な状態な訳で…。
ここはどこ?
うん、分からん。よって、後回し。
私は誰?
皆月 愛理 (18歳)。女性。
ついでにフリーター。ちょうど勤めていた店を辞めて、新規開拓しようとしていたところ。
うん、記憶は正常だ。
しかし、寝て起きたら、草原にいるのはどうかと思う。
そんな趣味はなかったはずだ。
冷静に自分の置かれた身を振り返ってみて、私はまたため息をついた。
「だからぁー、どこよ、ここ…。」
座っている地面に目をやる。
「あ…。」
なんか、ある。
クレジットカードの様な、金属の板。
とりあえず他には何も見当たらないし、とりあえず拾ってみようと手を伸ばす。
ポンっ。
気の抜けかけたシャンパンの栓を、抜いた時の様な音。
指先が触れただけなのに、爆発したかと思って、私は30センチくらい宙に浮いた…気がした。
「やぁ、こんにちは。」
…はっきり言って、ドン引きである。
いや、はっきり言わなくても、ドン引きだろう。
「ドン引きとか、失礼だな。」
いや、そんな格好の人見たら、ドン引きですって、普通の人は。
「えー、じゃあ、どんな格好だったら引かない訳?」
せめて服を着てください。
腰に布巻いただけとか、あり得ないですって、本当。
「…服って、何?」
え?そこから?
てかさ、私まだ一言も喋って無いのに、どうして考えてることが分かる訳?
「うん、ボク神様だから。」
はぁ?このちっこいのが?
下手すりゃ妖精にしか見えないこれが?
「さっきっからさぁ…、小さいだの、これ扱いだの、ドン引きだのって、酷い扱いだよね…。」
膝を抱え、空中でのの字を書き出す神様(自称)。
落ちていたはずの金属板は、見当たらない。
「分かった、分かった、自称神様、ここはどこなの?」
神様なら、分かるだろう。
「ここ?ここは、どこでもないよ。強いて言うなら、精神世界、かな。」
「はぁ?」
ぴきっと、青筋が、出来た、気がするお。
口調が変わったのは、気のせいだお。
きっと、多分。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいだから怒らないで話をきいてぇ〜!!!」
拳を握り締めた私に、神様(自称)は、頭を抱えて蹲る。
勿論、空中で。
「…分かった、とりあえず、聞くわ。」