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着替え終わったかな、という声が出なかった…
小学校を卒業したのに、まだ暗いところが苦手か、馬鹿美音、いくじなし!
美音は自分をけなし、自分を励ます。
でも、それでも…足は震える。
あの廊下の一番奥の壁は、昼間は白いはずだ。でも今は――…
美音は慌てて首を振った。怖くない怖くない…大丈夫。自分にそう言い聞かせてから、美音は明海の部屋に入ろうとドアを開け――…
る、つもりではあった。
が、必要なかった。
ドアが勝手に開けられた…明海が出てきたんだ。
「あ~、お姉ちゃん!」
明海は叫び、ひらひらのワンピースの裾をつまんだ。
「ほらほらほら~!これね、ママが買ってくれてたの~!」
明海はどう?と聞いてくるが…美音は軽く、こう返してやった。
「明海、もうすぐ小5でしょ。そういうの着るんだ…へぇ。ま、いいか。はやく原っぱ行こう。」
こういわれた明海はぶすっとふくれたが、美音にならって階段をおりた。
「お母さん、行ってくるね。」
「行ってらっしゃい。明海のメンドウちゃんと見てね。」
美音と和子の会話を聞いて、明海はまたふくれた。そしてため息をついて、靴を履き黙って外に出た。玄関のドアを開けっぱなしにしたまま、走る。
「あ、待って!」
美音も慌てて飛び出していった。