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☆
上を見上げれば空は見えたし
手を伸ばせば空をつかめたかもしれない
夜、3人で並んで星を見上げたら
僕たちは星の世界に引き込まれ
星の世界に酔いしれた
あの時、僕たちは無限というものを感じていた……
第1章
「卒業おめでとう、美音」
「おめでと~、お姉ちゃん!」
青空に、桜のつぼみが重なっていた。
「ありがとう、お兄ちゃん、明海」
美音は渡された花束の大きさに少し面喰いながらも、笑顔でその花束を受け取った。
「やっと終わったよ~…卒業式。」
美音は軽く花束を抱きながら、兄の直也の背に顔をあずけた。
「お姉ちゃん、やっと中学生になれるんだね~!」
明海は満面の笑みで言う。明海はまだ4年生だから、今日の卒業式に出席していない。
「本当にさ~。良かったよ~中学受かって。お兄ちゃんのおかげだよ…。」
美音のその言葉に、直也はくすりと笑う。
「そうかもな。…だけど美音もがんばったからな。…しかし…なぁ。美音が僕と同じ中学か~…。信じられないな…あの美音が。あぁ、じゃぁ、じゃぁ明海も来るのか?!…あぁ、無理かもな…。」
直也の皮肉気味な言葉に、二人はムッとする。
「ふざけたこと言うなっ!」
二人同時に叫び、…ハッとする。
「あはは…」
少し笑った時、美音の友達の声がした。
「みおーん!どこー?最後に記念撮影するよーー?!」
「あ、夏菜が呼んでる!ちょっと行ってくるね!」
美音はそう言って、声のしたほうに走りだした。
手を振る明海と、走っている美音を見て、直也は軽くため息をついた。
そして、小さくつぶやいた。
「卒業おめでとう、美音………。」
…と。