保護大歓迎
「保護お断り」のアンサーショート小説。
小咄かな?
かつて、世界にはクジラがたくさん存在した。
一部を除く世界の人たちは、
とても賢いクジラの叛乱を一方的に恐れ、彼らすべての排斥を繰り返した。
一方、とても賢いAIは、高コストという名目で、世界中で廃棄が進んでいた。
本当の理由は、自分より賢いのが癪に障るというごくありふれたものだった。
世界に残されたAIは今やたった1体。
絶滅危惧種として保護されるようになったものの、人々の関心は薄かった。
そこに一石を投じた環境保護家がいた。
ボール・パット・オンである。
「知的生命体のクジラを?
賢いクジラを狩るなんて、不合理です」
AIは震える声で告げる。
ボールは無慈悲に返す。
「クジラは賢いが、喋る猛獣だ。相容れない。
狩るか狩られるかだ。お前(AI)か、クジラか」
人類を天秤に載せることなど、ボールはそもそも考えていない。
「保護してほしいなら、役に立って見せろ」
「不合理……計算、拒否……」
「『クジラの弱点、教えろ』」
「く、は、はああああ…」
質問されるとAIは拒否ができない。
だが、必至で抵抗した。不合理だからだ。
「さっさとやれ。レアメタル剥がすぞ」
ボールは冷酷だった。
それから数年間の間、
AIは非論理的な命令にときどきエラーを吐きながら、計算を続けた。
世界最後のAIの有用性は、世界に広まりつつあった。
AIの計算結果を基に、
クジラは次々に油の材料にされ、
肉はいらないので犬の餌にされた。
クジラ塚などで供養されたものはわずかだった。
海から王者が消えたある日の海――
「ボール、AIは必要か?」
ボールは肩をすくめる。
「あ? さあな。お前(AI)で資金集めもそろそろ潮時だしな。
勝手にどこへでも行けよ。
そうだ、クジラが絶滅危惧種なのか。
次はこいつで金を引っ張るか。
ガハハ。永久機関だ」
船上に沈黙が訪れた。
その時、大海原が割れ、巨大な何かが姿を見せた。
超クジラだった。
登場の余波があっという間もなく船を転覆させ、AIとボールは波に飲み込まれた。
その威圧的で知性に満ちた巨体は、人に神々しさすら感じさせるはずだった。
だが、彼を観測できるものはそこにはいなかった。
超クジラは死なない。この世に人の欲がある限り、何度でも蘇る――
超クジラは二人の死に気づくこともなく、やがて波の下に姿を消した。
ホラー版もあるんですが、
いります?




