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くろいねことまいご

ここは西の大地。私は、この草原にある村で生まれた。両親は、畑と酪農をしていてその仕事を手伝っていた。私の村の隣にある暗い森。ここは迷いの森。奥まで入るとたちまち迷子になってしまうという。今、私は両親にヤギのミルクを取ってくるように言われ、いつも横切っているこの森に入り横切ろうとした。

「ここどこ?」

やってしまった。いつもは、迷うことなんかないのに。迷いの森など子供が森に入ってしまわないようにしている迷信だと思っていたのに。

「いつもはこっちの木の間を抜けたらヤギの飼育場所なのに。」

私は帰ったらそれはもうこっぴどく怒られるのであろう。というか帰れるのか、これは。そんなことを思っていると少し先の茂みから音がした。ここは決して小さい森ではないし、危ない野生動物が眠っている冬でもない。クマが出てくる可能性だってある。そう思い、少しずつその茂みから離れるように後ずさりしていく。黒い何かが茂みから出てくる。もう死んでもおかしくはない。覚悟して目をつむった。だが、私に鋭い爪や牙が襲い掛かってくることはなかった。茂みの前にいたのはかわいらしいくろいねこだった。

「この道さっきも通りましたね。もうどのくらいここにいることやら」

「え、ねこ?」

「はい、くろいねこです。あなたは?」

「えっと、エリー。エリー・エドワード」

「よろしくお願いしますエリーさん。」

「ところで、ねこさんはどうしてここに?」

くろいねこは少し考えるようにして、下を向いたがすぐにまたエリーと目を合わせた。

「恥ずかしながら、迷子です。」

くろいねこは無表情でそう言った。

「そうなんだ。私も迷子。くろいねこさんと迷子だね」

「そうですね。エリーさんはここに住んでいる人なのですか?」

「この森の外の村に住んでいるの。横切るつもりだったんだけど迷子になっちゃった」

「それは災難でしたね。」

そんな会話をしながら、くろいねことエリーは森を歩いていた。森は少し日が差していたが、枝が邪魔をしていて暗かった。夜になるとどうなってしまうのだろうか。そんなことを考えながら自分がこの森に入った方向に戻っていた。となりにいるくろいねこはその身に合うリュックサックを背負っていてエリーはそれを見ていた。

「前に、村に来たねこのて屋さんは荷台を引っ張っていた気がするけどくろいねこさんはリュックなんだね」

「そのねこのて屋は本店に帰るところだったのでしょう。私は、本店を出発してまた旅をしているところのなのであまり荷物はないんです」

エリーは納得したように、前を見た。森の終わりはまだ見えない。木と草がうっそうとしているだけだった。どのくらい歩いたのだろう。エリーが森に入った時よりも森が暗くなっている気がした。くろいねこは無表情で静かに歩いていた。

「ちょっと止まってください」

そう言ったくろいねこは目の前に見える少し大きい木をじっと見ていた。何を見ているのだろうエリーがそう思った瞬間、木の後ろから大きな黒いものが出てきた。

「な、なにあれ。」

「熊です。下がってください。」

大きく黒い生き物はよく見てみると本当に熊だった。大きな爪に牙。嘘みたいにエリーの手足は動かなくなり逃げることもできなくなった。熊がこちらに走ってくる。もう、終わりだと目をつむる。目をつむる瞬間、銃を構えるきれいな女性を見た気がした。


私が次に目を開けるとそこは村にある私の家だった。ベッドから起き上がるとベッドの横に置いてある椅子にくろいねこが座っていた。

「目が覚めてよかったです。今、人を呼んできます」

そういってくろいねこは部屋を出て行った。少し待っていると慌てた様子でお父さんが部屋に入ってきた。お父さんが言うには、私がヤギの小屋にいなかったのでもしやと思い銃を持って森に入ると銃声が聞こえたそうだ。その音を頼りに近づくと倒れた熊と私、それと一匹のくろいねこがいたらしい。話を聞くと、くろいねこが熊を銃で撃ったようで私にもくろいねこにもけがはひとつもなかったという。ねこのて屋の猫には、予知夢が使えるものもいれば人に化けられる子もいるらしい。くろいねこもその類の猫だったのだろう。村のカフェでくろいねこが休憩していると聞いた私は今、カフェへと走っていた。カフェのドアを開けるとくろいねことみけねこが話していた。

「そうやぁお前、森で迷子になったらしいな。まだ、方向音痴は治らないか」

「うるさいですね。一号さん。あなたも道に迷うことくらいあるでしょう」

「まぁ、お前みたいな頻度じゃないがな」

「そうですか」

くろいねことみけねこが火花を散らしている席に近づいて私はこう言った

「くろいねこさん、助けてくれてありがとう」

そういいながら私は押し花のしおりを渡した。

「助けてくれたお礼。お母さんと一緒に作ったしおりなの。気に入ってくれるといいなぁ」

「とてもきれいで素敵ですね。ありがとうございます。大事にします。」

くろいねこはしばらくしおりを見つめると持っていたリュックにしまった大事にしまった。それを見届けた私はまたねと言って店を出た。もう一度振り返ってくろいねこを見ると隣のみけねことまた話しているのが見えた。また会えた時は精一杯おもてなしをしよう。だから、また会えますように。


今回はあまり自信がないですが楽しんでもらえたならうれしいです。

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