逃亡する世界線④
遅くなりすぎました申し訳ございません。第9話でございます。
今回は、スナイパーちゃんと激闘(?)を繰り広げる話でございます。
よくわからない言葉がたくさん出てくると思うので、解説はあとがきに書こうと思います。
お楽しみいただけたら幸いでございます。
スナイパーが1人、道路に飛び降りる。
「対武神モード、おーん!!」
自動リロード、完了。
Roomの再セットアップ……完了。
身体強化スーツのブーストを準備、完了。
脳を一時強制スリープ……完了。
カウントを開始。
・・・
赤い目を光らせ、攻撃の出所を探る。
しかし、多すぎる。この目では、可能性を絞り切れない。
銃弾を始めて視認するタイミングは、全ての可能性において、今から約5秒後。
逃げようとも、叶わない。
相手の弾丸がどのようにして私に到達しようとも、モミが死ぬタイミングは少しもぶれることはない。
しかしながら、弾丸が放たれると仮定されるポジションは、完全にランダム。
[助けてやろうか]
聴きなじみのある声が、響いて聞こえる。
モミは、それを受け入れた。小さくうなずくと、ふっ、と笑った声がして、意識が遠のいた。
・・・
意識を回復・同時に、ブーストを行います。
5、4、3、2、1……
『0』
爆発的な身体能力の増加、一瞬のみの超加速。
地面を鳴らし、目的の位置を、考える。
制限時間は、1秒にも満たない。
全ては、武神の予測を打ち破るため。
たどり着いた。練習通りだ。
引き金は、絶対に時刻をずらさない。
振動が刻む時間が、聞こえる。
自身の運動と弾の慣性、重力。
至近距離で、寸分の狂い無く、心臓を狙う。
引き金を……引く。
・・・
「特定……はやめとくか。」
今はできないしな、と呟く赤い目の少女。
ほんのり光る銀色の髪は、スモッグに屈折して輝く。
「分岐おっせぇなこいつ。ほんとに人間か?」
その瞳で空中を見つめ、言う。
「まぁいい。0.5秒くらいまでなら今でも反応できるだろ……。」
彼女はとんでもない発言をしているが、本気である。
「―――ばっちこい、だ。」
少女はゆっくり腕を構えた。
・・・
現れたスナイパーの影に気づく。
”今の彼女には反応できまい。”と、人間のギリギリまで鍛え抜かれたスナイパー。
スモッグの中だろうが正確に位置を探る耳、
そして、特殊能力のコンピューターによる完全制御、
そして何より、非人道的な訓練に耐える信念の強さ。
東教会の兵士であり、対武神の兵器、それがスナイパーの正体である。
しかし、足りなかった。
武神の目は、正確に弾丸を捉えていなかったはずであった。
しかし、その手は正確にかつ急速に、発射されたそれに近づいた。
とうとう彼女は、弾丸を拳の中で受け止めてしまった。
ジャンプの慣性に吹き飛ばされ、驚きのあまり受け身さえ取れなかった。
かなり無理やりなスーツの超ブーストが、一撃で仕留められなかった緊張を煽る。
「あいつがくる……殺される。」
絶対に勝てない。しかもあちら側には居場所がバレているとなると、殺される他ない。
スナイパーは怯えて、東教会めがけて這うだけで精一杯だった。
「―――おい。」
突然、頭上から声が聞こえた。
「国防軍だ。大人しく、来てくれるな……?」
お楽しみいただけたでしょうか?
逃亡編、これにて終了となります。
次回はやめに更新することはたぶんできないので、不定期という形にします。
(今回も待たせて(待った人なんているか??)しまったので)
用語
・Room
神が与えた能力の一種であり、人類の大半が保持している。
個人で違う”エネルギー”を生み出す真っ黒な物体のこと。
形状は可変、実体はなく、イメージと形が直接結びつく。
(エネルギーの例:引力、電磁力、熱、など……)
スナイパーちゃんのRoomは”電磁力”系のRoomですね。
・武神
太古、存在した6人の天使の1人。最も悪名高いとかなんとか。
次回:寮生活する世界線 編