回顧する世界線 - レン
第6話です。
今回は、本筋を差し置いて、『回顧する世界線』編となります。
今後も時たまに出てくることになるでしょう。
ぜひ、楽しんでください。
ああ、空が黒い。
黒く、静かなビル群。
ワープポッドの普及により、人類は、私の祖母の世代よりずっと進歩したという。
でも、あの厄災が起こる前は、世界は今より活気があったらしい。
人類は、1世紀ほど前のあの厄災でだいぶ個体数を減らした。
しかし、それは同時に莫大な利益ももたらした。
ああ、歴史を知れば知るほど、神はなんとも素晴らしい。
神は間違いなく、至高。
・・・
私は、子供の頃に家を追い出された。
理由は、「養っていけるほどのお金がなかったから」
まだ、できたばかりの新しい国家だ。
厳重な法整備などあるはずもなく、子供が街に放られていてもお構いなしであった。
私が姉に連れられながら、街をさまよっていたある日。
細い通路の奥から、何やら光が漏れていた。
その光に、街に感じることのできない暖かさを感じた。
本当に無意識のまま、それに惹かれていた。
目が光を追う。だんだんと近づいていく。
宝石のような、白い髪。
そのひとつひとつが、体が、ぼんやりと、かつ強烈な光を放っていた。
輪郭はぼんやりと白く空と調和し、液体のような不安定さもある。
人、に見える。
姉が、口を開く。
「―――あなたは、だれ、なの?」
「私は、神。」
それが、私と神の、出会いだった。
神は姉に、よい耳と、声。
私には、髪の毛を3本だけ、与えた。
神は私たちに、教会の場所を教えた。
・・・
教会は、私たちを手厚くもてなしてくれた。
教会の人たちは皆、私たちを『神の子』として、もてはやした。
私たちのために専用の服と髪留めが作られ、私たちの周りには優秀なガードがついた。
次第に私たちは、教会の中で相当な地位を得た。
これは、神の慈悲であり、私はそれに報いるべきだ。
そう考えるようになったある日、好機は訪れた。
ニュースにて、教会の周辺に奇妙な隕石が落ちたという報道がされた。
地上に落ちる前に消滅しなかった、大きな氷。
常温では気体にしかならないような結晶が、3日、4日もたっても小さくならない。
それどころか、大きくなってすらいる。
どこを触ろうが絶対零度で、削り出すための道具を凍らしてしまうほど。
私は思った。
これは、神の手のものだ、と。
すぐ調査に行こうとするも、ある日突然、その存在がなかったかのように、現場にはやけに広がったクレーターだけが残されていた。
・・・
そしてこの数日後、とある市街地にて、教団にとっての”裏切者”が目撃された。
その発見の功績を称えられ、私は、ギブド教団南教会幹部へと至った。
SFっていうのは嘘じゃないです。
新キャラクター
・神
零と呼ばれているこいつは、この世界において”実在した神”です。
古代、創世記時代とよばれる時代に、人類を導いたとされる神。
用語
・あの厄災
人類のほとんどが、”ある力”を得ることになった瞬間を指します。
しかし、その結果が争いへつながってしまったため、厄災なんて呼ばれ方をされています。
では、感想、意見、考察ありましたらください。
それでは、ごきげんよう。