出会う世界線
どうあがいても、お話を長く書けないんですよね。
少女は走った。
銀色の長い髪を揺らし、豪雨の音を振り払った。
地面に薄く広がった雨水の波を、つま先で弾いては砕け、足跡を隠した。
激しい雨音と防具でくぐもった掛け声が、迫りくる。
関節部の摩擦が雨音に掻き消え、オレンジ色の光が霧の中に存在を示す。
心臓が言うことを聞かない。無意識に肩が上下し、浅い呼吸が喉を乾かせる。
黒い強化カーボンのビルで姿を隠し、背中から壁にもたれかかる。
少女は金色の瞳を赤く輝かせ、目の前をぼーっと見つめる。
防具がこすれる音、その音に今一度体を震わせる。
短く酸素を呑み込み、ビルの隙間へ潜っていった。
・・・
今の時代、とても珍しいコンクリート造りの2階建てアパート、その一室に住む1人の男がいた。
男は自室で何個ものモニターを見つめながら、指先に苛立ちを込めてキーボードを弾いた。
『ヒイラギ』――国防軍の軍人でありながら、発明家・研究者でもある。
才能に恵まれ、仕事先や地位にも恵まれたが、残念ながら上司には恵まれなかったらしい。
先日急な潜入任務を任され、「安いから」という理由で、近くの1世紀ほど前のボロいアパートに引っ越す羽目になった。
おっと、仕事が終わったようだ。
背中をそらして、血を巡らせる。
タオルと着替えを、時代遅れの木製のタンスから取り出し、風呂へ行く。
ヒイラギはなによりも風呂に入るのが楽しみであった。
猫背を正して、風呂のドアを開ける。だが、昔の風呂は沸かさないと入れないのが常であった。
――正した猫背は元どうりになってしまった。
風呂を沸かし、待つ。
ようやく、風呂が沸いたようだ。勝利のファンファーレがなり、さぁ風呂に入ろうと、背筋が伸びる。
「ピンポーン」
――なんと残酷なことに、開戦の合図が鳴ってしまった。
これにはヒイラギも、肩を落とした。
・・・
少女が走り、たどり着いたのは、今時珍しいコンクリートで2階建てのボロアパート。
金色の瞳が赤く染まると、確信したようにその一室のインターホンを鳴らした。
・・・
ヒイラギは、とぼとぼと歩いて、ドアを開ける。
「はいぃ……どちら様でしょ――
「匿ってください!!」
――はぃい??」
こうして、2人は出会った。
楽しんでいただけたでしょうか……短いですよね、わかります。
登場人物の整理をしましょう。後からわからなくなりますからね、ラノベって。
・少女
銀髪で金の目をした少女。髪の毛はぼんやり光っています。
・ヒイラギ
国防軍の軍人であり、発明家、研究者でもある。
ご意見ください。