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SS-521

班員たちがオカダユミが倒れていることに気がついたのは、実際彼女がその場で倒れてから、だいぶ後のことだった。

もちろん全員驚いたが、彼女のもとに駆け寄ったのはナガト一人だった。

それはこの誰も理解できない状況において一人に構っている暇がないというよりも、単に彼女が関わり合いたくない「はみ出し者」であることからに起因した。

オカダユミはクラスの中で浮いていた。一見落ち着いた可憐な少女だが、いざ話すと相手を畳みかけるような話し方をし、たとえ教員でも、彼女の前では聞き手に徹するしかなかった。関わるとロクなことにならない。そういう人間が班にいることに多くは問題視し、コスモとヤエに至っては、彼女の目の前で班に入れることに反対した。だが、ナガトはむしろ適度な距離を取りつつも、孤独な彼女のことを日頃から気にかけていた。


ナガトが何度か大きな声で彼女の名を呼んでも、オカダユミは目を覚ました。

ナガトは彼女が単に貧血で倒れたと気づくのにそう時間が掛からなかったが、念のため彼女を艦長室のベッドに寝かせることにした。艦長室のベッドへの道はほんの数歩だったが、女性を初めておんぶしたナガトには様々なことが頭をよぎった。「なんでお前がそいつをおんぶしてるんだ?」という周りからの視線。背中越しに感じる感触、ベッドまでの長い道のりで彼は何度も下心でこんなことをやってるのではないと自分に言い聞かせた。

やっとのことで彼女をベッドまで連れていき、横にさせようとした時、ナガトはオカダユミの衣服から何かA4サイズほどの白い紙が落ちたことに気づき、それを拾った。

最初は修学旅行のしおりだろうと思い、何も考えずに再び眠りにつく彼女のベッドの脇にその手を置こうとしたが、その手は自然と止まった。


「ああ、これか!」

2年前、父親と潜水艦の映画を見に行った。父親は古い映画好きでよくナガトを名画座に連れていった。あれはデンゼル・ワシントンが出てたな。オカダユミの衣服から落ちた紙はその映画に出てた紙とよく似ている。

「へえ、すごいや、これが指令書か」ナガトはそんな呑気なことを言ってしばらくワクワクしながら眺めていた。

指令室に戻り、終わらない議論を続けるホダカたちをよそに、ナガトはさっそく指令書に書かれた座標をモニターで確認した。


「なあんだ 海上かぁー ああ、揚陸艦を撃沈させろってことか!」


終わらない議論にイラついていたメンバーはこの突拍子もない無邪気な子供の声には驚いた。


「何やってんの?」メイが聞いた。

「座標を見てみろよ!この地点から2000kmはある!この潜水艦はIRBMを積んでんだ!

ああ、やった!やっとこの国は本気になったんだ!」


狂ったか?まあ最初に狂うならあいつか。一人喜ぶナガトを見て、ホダカは少し安心した。

一人でも気が狂ったら、他の者はそいつを落ち着かせるために冷静になるーそう思ったのだ。

だが、彼は誰よりも正確に情報を把握していたのは、気絶した少女と目の前にいる気の狂った少年であることを、自分たちを閉じ込めたこの巨大なクジラから教えられる。


「SS-521  指令された座標に向かえ。安全にな」 ナガトが突然そう言った。


「了解。速力三分の一、進路1-9-0」 鉄のクジラの腹から声が聞こえ、再びその巨体が動き出した。



















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