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6−36 もう一つの顛末 (3)

「真面目な事を言えば、お前のこれからの仕事に権力は必用だ。権力だけ持ってても頭が悪いのでは役に立たないだろうが、そこは俺も勉強するから、待っていて欲しい。俺はお前の前を守る事は出来ないし、一緒に付いて行く事も出来ない。それでも、お前の後ろを守る事はこれから手にする権力があれば出来るし、これからずっとお前の帰る家とお前の立場を守ってやる。その気持ちだけは誰にも負けないから、俺を信じて一緒になって欲しい」

「あんたさ、『これからずっと』なんてプロポーズみたいな言葉、大事な人の為にとっておきなよ?簡単に使うと勿体ないよ?」

「あのな、これは婚約を申し込む言葉なんだよ。だからプロポーズの言葉なんだよ」

さすがに私の顔が赤くなった。本気なのか。

「その、でも、アグネスとか、どこかの良家の子女の方がはったりの利く顔してない?」

「だから澄ましていればお前は他の女に負けない顔してるんだよ。そして俺はお前の寝ぼけた顔を毎朝毎晩一番近くで見れる権利が欲しい。他の女じゃ駄目だし、他の男がお前の一番近くにいるのは我慢ならないんだ」

うん、なんか恥ずかしい事言ってるぞこいつ。むしろ聞いてる私の方が恥ずかしくて顔が赤くなる。

「大体、私なんか顔が真っ赤になってるのに、あんたは頬が赤いだけじゃないか。どこまで本気で言ってるんだよ」

「俺は王子として感情を隠す訓練をしているから頬しか赤くならないんだよ」

「隠せてないじゃん…」

「隠せてないと言う事は、俺の気持ちは分かったな?じゃあ、責任もって回答しろ!」

ひぃ、そんな事言われても…

「じゃ、じゃあ、お友達から始めさせてくださいっ!」

「友達扱いすらされてなかったのかよ…」

「いや、仲間と思ってたから。仲間っていうのは仕事を一緒にする人間で、私情より行動上の信頼で結ばれた間柄だから男女の区別はしない。でも、友達っていうのは私情だけで付き合うから、好きって気持ちが強くなれば恋愛にもなる。そしてその気持ちを確かめる期間はむしろあんたが私を見極める期間でもあるし」

「うん、そうだな、お互い見えていない部分も確かめる時間が必要だな。俺が頼りになる部分も見せてやる」

「そっちは心配してないよ」

頼りない奴って確信してるから。

「お、意外と信頼されてるのか」

「いや、その…」


 ここでアルフレッド王が口を挟んだ。

「どうやら話は纏まった様だな。キアラ嬢、愚息は思っていた以上に甲斐性がない様だが、そこまで嫌でなければ少し猶予期間を与えてやって欲しい。決定権は貴女にあるから」

王の顔に隠せない苦笑が浮かんでいる。王妃に至っては俯いておでこに手を当てている。フォーウッド子爵夫妻は何とか苦笑を面に出さないでいる。キャベンディッシュ公爵夫妻はむしろ子供を見守る笑顔だった。


 私としては別に嫌じゃない。こいつは頼りにならない男だけど。

「いえ、嫌ではありません。乱暴なところはありますが思いやりもある事は知っています。この人と色々上手く調整出来るかを見る時間が必用と思います。この人に後悔して欲しくないんです」

ランバートが口を挟んだ。

「絶対後悔なんかしないっ!」

…だからね、思い込みで進めてもいつか齟齬が現れるから、その辺をちゃんと見極めろって言ってるんだよ。そんなところが頼りにならないと言っているんだ。アルフレッド王も苦笑したが、とりあえず話を進めた。

「それでは、キャベンディッシュ公爵夫妻とも少し話をして欲しい」


 キャベンディッシュ公爵と夫人は老齢に達していた。

「キャベンディッシュ公オズワルドだ。君には王家や公爵家の巻き添えになってしまって申し訳ないと思ってはいるんだが、せっかくだから仲良くして欲しい」

「勿体ないお言葉です。色々至りませんが、直していく様に努力致します」

「そう固くならないで良いよ。こちらが妻のダイアンだ」

「よろしくね。息子夫妻も堅苦しくなくつきあってくれるから、安心してね」

「はい。よろしくお願いします」

公爵家の堅苦しくないのレベルは平民のレベルと違うと思うんだ。そこは家に戻ってから色々聞かないと。


「まだ時間はあるから、心の準備が出来たら仲良しのメイドと一緒にいらっしゃい。後、ランバート殿下の侍女をしていた孫娘のジェニファーが家に戻ってあなたの相談相手になるから、あの子に何でも相談してね」

それを聞いた私の顔から血の気が引いた。公爵家の孫娘が、年の近い王子の侍女を務めていた…普通に考えれば、それは将来の夫婦の相性を見ていたのではないだろうか。そんな私を見たキャベンディッシュ公が話してくれた。

「何、気にしないで良いよ。あの子によると、君達が仲睦まじくしているのを楽しく見ていたとの事だから」

ダイアン夫人も口を開いた。

「二人の事を生暖かく見守っていたって」

それを聞いたランバートが頭を抱えた。

「あいつ…」

なるほど、ランバートが血迷っても止めない訳だ。あの鉄面皮の下で他人の恋路を心の中でにやにや笑って楽しんでいたんだ。いくら育ちが良いと言っても私と同じ女だなぁ…

 明日に落ち着く先を書いて終わる予定です。

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