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1−9 襲撃 (4)

 さてどうしよう、と思っていたところで、宿の中が騒がしくなってきた…こっちは別動隊か。しかし、この辺の宿は海外の人間が多く泊まる宿なのに、宿の評判を落として良いのか?客が減ったらマフィアの縄張りの繁華街の売上にも悪影響がある筈なんだが。金、もあるのだろうが、大貴族の依頼で後始末もしてもらえるのだろうか?


 まあ、良い。物音がし始めたらこっちのものだ。一番後ろの男の首筋を強打する。大きな音を立てて倒れない様に、片腕を掴んでやる。そして、そっと地面に降ろす。先を行く男達は気付かない。何故なら宿の別方向で騒いでいる内に別口で入る為に、先を急ぎだしているんだ。そうして4人程転がしたところで、先頭の男が振り向いて喋る。

「おい、後ろはどうした?」

ああ、もう急がないといけないね?振り向こうとする男達を小さな雷撃で気絶させる。二人までは倒せたが、先頭のリーダーと下っ端二人は距離をとった。

「手前、何者だ!?」

…大声出して良いのか?

「あんた達と同じ、曲者だよ」

リーダーらしき男が突っ込んでくるところを、サイドステップで向かって右手の男に向かう。男は手に持った片手剣を振るが、振った逆側に踏み込んで小さな雷撃で倒す。


 後、二人…リーダーの踏み込みは鋭い。それだけにすれ違えばすぐには戻れない。その隙にもう一人を倒す。

「異能使いか?」

「気のせいだよ」

真っ暗闇の中で雷撃を使えば、小さくても閃光が見えてしまう。こいつにはもう魔法を疑われている…口封じに殺す…のは嫌だな…男が突きの姿勢を取った。どうせ突きと見せて途中で薙いで来るんだろう。相手の突きを右ステップで躱す。そして途中でこちらに剣を振ってくるのをしゃがんで躱し、起き上がりながら右手で鳩尾を突き上げる。

「ぐはっ」

最後の呻き声を上げてこの男も失神した。


 少なくともこの男だけは縛って官憲に引き渡さないと…何だか体が怠い。とりあえず隣の男の外套を脱がしてねじり、リーダーらしき男の両手を後ろ手に縛ろうとする。倒れている男をひっくり返してうつぶせにするだけで時間がかかってしまった。


 何とか縛り始めたところで、例の調査チームの連中がやって来た。女性が口を開く。

「何をしているの?」

「へっ、あんた等が頼りないから、別動隊は倒してやったんじゃないか。それで、縛ろうと思ったんだが…」

不味い、目が回って来た。

「あなた、過労よ。強化魔法の使いすぎだわ」

き、強化魔法なんて覚えてない…そこで私は気を失ったらしい。


 コーデリアが近づいて、倒れた人物のフードを下ろして顔を確認する。

「やっぱりキアラか…」

エイブが近づいて来てキアラの頬に手を当てる。

「なるほど、過労だ」

「これだけの人数を強化魔法で倒せば、過労にもなるでしょうよ。ダリル、こいつらを表に引っ張って行って」

黒髪の男が無言で二人ずつ表通りに引っ張っていく。もう下男を港湾警察に通報する為に行かせている。犯人達を拘束する為に馬車がやって来るだろう。

「さて、坊や。頼りないっていうのは貴方の事でしょうし、殺しかけた前科もある。ここは罪滅ぼしにキアラを運んであげて」

若い騎士の男は顔を顰めながら、キアラを抱き上げた。油断ならない上に生意気な口をきく女だと思っていたが、抱き上げてみると子供の様に軽い体だった。そして、力なく反らした顔の顎筋もやはり少女らしい幼い形をしていた。


 …ぺちぺち、と頬を軽く叩かれた気がした。

「…キアラ、起きなさい」

ん?いつ寝たんだろう?軽く瞼を開けると、ランプで明るく照らされた部屋だった。こんな部屋に見覚えは無い。

「何があったか覚えている?」

この女性と仲良くなった覚えが無い。あれ?

「あなたは宿の裏で刺客を倒した後に過労で倒れた。覚えてるわね?」

げ、こいつらに顔を見られた。不味い…

「そんな顔しないで。悪い様にはしないから。でも、一先ず工場に帰らないと不味いでしょう?」

…それはそうだけど。今から逃げ出しても食べていく手段が無いんだし…

「適当な理由を付けて、証言の為にあなたを王都に連れて行く、という事にするから。このまま工場にいて、魔法を使える事を他人に知られたら、普通の女達より価値の高い商品になる、それは分かるわね?」

…もう身元も知られてしまった。皆殺し…でもそれがバレたら家族にまで迷惑がかかる…

「キアラ!だから、悪いようにはしないと言ってるでしょ!我々は王家の命で動いているの。異能使いは貴重な人材だから、扱いはあなたが思っているより良い筈よ」

…王家も全部滅ぼす覚悟が無いなら、従うしかないか…溜息を吐いて、目を閉じるしか無かった。

「これからどうするの?」

「まず、あなたは工場に帰りなさい。不審な事をして目を付けられない様に。明日の朝一で面会に行くから、どうしても持ち出したい物だけ持って来て」

「分かった」

寝かせつけられていたベッドから起き上がると、外套が無い。

「私の外套は?」

黒髪の男が椅子の上に畳んであった外套を渡してくれる。

「それはあんまりな物だから、最初に服を買ってあげるわ」

「今の恰好だと王都に連れていけないと?」

「そういう事」

つくづく、女性労働者は最下層の人種だと言う事が分かった。みんな服に使う金などないからこんなレベルの服装なのだ。

 久しぶりにマウス無効になって投稿が遅れております。クロームブックは時々動作がおかしい…

明日も更新します。

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