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6−22 続く後始末 (2)

「で、もう一件、伝えないといけない事がある。反乱貴族の領地近くで早馬が寸断されていて情報が遅れたが、教会の情報網で昨晩入った情報がある。一昨日、ヴィンセント達が王城に侵入した日の晩、マールバラの本城が三十分間落雷に打たれ、尖塔が倒壊した」

「……雷雨だったの?」

「少なくとも目撃者の上には雨が降らなかったらしい」

「…… 」

「そしてもう一件情報がある。マナーズ侯爵の領地内の商業地にも同じ日の晩に落雷が三十分続き、商業地帯一体が全焼した。つまり、ジンジャー商会の本拠地と周辺の商会の店舗と倉庫が全焼した」

「…雨は降らなかったんだね?」

「雨が降ってたら延焼は限られていただろう?」

「そうだね」

「これに関しては騎士団の早馬が今朝王都に辿り着いて、追加情報があった。ジンジャー商会の倉庫には、膨大な量の小麦が貯蔵されていたとの事だ」

「出荷調整をして売価を釣り上げていた、と言う事?」

「いや、それもあるが。ニューサム商会はジンジャー商会の部下で、多くの場所で領主などの輸送代行もやっていたのは知っているだろう」

「うん」

「僻地で他の商会の出入りが無い様な場所でもニューサム商会は穀物を買っていたんだ。安価で買い叩いていた」

「…つまり、ジンジャー商会が地方の穀物を買い叩いて農家を苦しめ娘達を出稼ぎに放り出す原因を作っていたと?」

「それもあるだろうが、お前は言ったろう?穀物を買い叩く事で貴族の地盤を揺るがそうとしているのではないか、と。つまり、ジンジャー商会は本格的にこの国を傾けようとしていたと考えられるんだ。そしてそれは、いつでも反乱貴族達に支援物資を送れる様に準備をしていたとも言える」


「…それは調査して貰うとして、落雷時に蝙蝠は見られたの?」

「雷雲らしきものは見られたが、蝙蝠の群れだったかどうかは分からない」

「つまり、本当の『神鳴り』だったと?」

「そう思われる」

「…分かった。外出の許可を貰える?アグネスを誘って大聖堂で頭を下げて来る。上司に」

「もう聖女の養家アシュリー伯爵家には連絡した。大聖堂にも連絡してある。だから、これから俺と大聖堂に行こう。途中で聖女は拾っていく」

「あんたは何しに行くのさ!?」

「だから王家も頭を下げないといけないだろ?」


 ここでキアラが気付いた。

「あ~っ!」

「何だ!?」

「その日の晩に、蝙蝠先輩達が私の頭を蹴り続けたじゃないか!」

「ああ、お前が納得してるから何も言わないが、酷い仲間だと思うぞ」

「だから、あれは上司がここに来て頭を叩けないから、代わりに蝙蝠先輩達に蹴らしたんじゃないかと」

「何でだよ!?」

「だから、報酬も貰えないで仕事をするのが嫌だったんじゃない!?私だってお駄賃は大銅貨一枚しか貰った事ないけど」

「お前、神様に酷い事言ってないか?」

「だって、今までだって碌に報酬なんてくれないでこき使うんだよ!?文句は言いたくなるよ!?」

「…うん、俺は何も聞かなかった。文句なら大聖堂で心の中で言え」

「うん、日頃の恨み言を思いっきり心の中で言ってやる!」

「程ほどにな。じゃあ、準備してくれ」


 馬車は正真正銘の王家用の馬車だった。つまり、王子が公式に大聖堂にお祈りを捧げに行く、それを示していた。キアラとしては乗り込む前に気が重くなった。

「何か、乗り心地がアレなんだけど」

「そうか?他の馬車よりは乗り心地が良い筈だが」

「いや、この外観の馬車に乗るというのがそれだけで酷いプレッシャーが」

「じゃあ、ワンランク下の馬車なら文句は無いな?」

「庶民的には子爵家の馬車だって立派すぎるから、王家用からワンランク下がってもまだ恐れ多いよ」

「神の使いが何を言うか」

「その中でも一番の下っ端だからねぇ…」


 アシュリー伯爵家ではランバートだけ降りて伯爵夫妻に挨拶をした。ランバートが手を貸して聖女アグネスを馬車に乗せたが、二人の顔つきが固かった。アグネスはキアラの手前の席に座って、キアラを見て嬉しそうな顔をした。

「キアラ!会いたかった!」

「うん。王都内が緊張状態だったから遊びに行けなくてごめんね」

「ううん!キアラにはお仕事もあるからそちらを優先してください。時間が出来たらまた会いに来てくださいね」

「うん。もちろんだよ」

さすがに聖女様は神様優先だ。いや、もちろん私に上司から連絡があるのは大概緊急事態だから最優先で出かけるけどさ。


 そんなアグネスはランバートには厳しい。

「王家にはもっとしっかりして貰わないと、主の手を煩わせる様な事は無い様にして頂かないと」

ランバートも憮然とした顔で答える。

「分かっている。今回の乱を機に、過去の政治の歪みを修正していく予定だ」

「しっかりとやってください」

「分かっている」

聖女様がお怒りだと横で宥めるのも難しいね。この二人が一緒になるなら、ランバートはもっとしっかりしないと年中尻に敷かれる事になりそうだよ。

 神は死んだと言うけれど、楽園から追放した後、神が人に干渉する訳ないと思うんですね。信用してないんだから。だから、神の言葉を聞いたとかいうのは、古事記が藤原氏に忖度して改竄された伝承である、みたいなものかと。怖いから明言しませんが。明日はクリスティンの更新です。


 本編と関係ないですが、ホンダロケットはスペースXのロケット同様に、打ち上げ後に姿勢制御して垂直着陸するのを目指しているそうです。きっと十年後には保守コストがかかりすぎるから、と使い捨てに回帰すると思います。

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