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6−14 反乱 (8)

 ニューサム商会のゲイリー確保の報を受けて、アルフレッド王はブラッドフォード・クラレンスと個室で対談を行った。

「叔父上のご指導の下、各公爵家の協力で反乱は鎮圧されつつあります。ご助力ありがとうございます」

「何、公爵家の使命に従っただけです」

「ヴィンセント他の反乱貴族については叔父上の筋書とは異なってしまいましたが、よろしかったので?」

ブラッドフォードは小さく息を吐いた。

「神意など気にはせん。だが、身一つで運命を切り開こうとする若者の背中は凛々しく、清々しいものだ。異能があろうが無かろうがな…良いものを見せて貰った。だから、時には若者の作った流れに乗るのも良いと思ったんだ」

例え自分が倒した相手の命でも惜しいと思う若い天使の前で、床を血の海に染めるのは気が引けたのかもしれない。但し、ブラッディ・ブラッドフォードはやるべき事はやる男だ。



 ヴィンセント一派の王城侵入に始まる反乱も既に12時間以上経過していた。王城の中で寝かされていたキアラは蝙蝠の羽ばたきで目が覚めた。

「あら、先輩。今晩も勤勉ですね」

寝ぼけたキアラに蝙蝠先輩は蹴り一つで応えた。寝ぼけてんな阿呆とばかりに、微妙に目元に怒りが籠っていた。

「あ~、出番ですか。貧乏暇なしですものね」

布団からごそごそと起きだしたキアラは、妙に豪華な寝間着を着せられているのに気付いた。

「あれ~、また倒れたんだっけ…ああ、そうか、反乱があったんだ」

まだ頭が半分寝ていたが、空気魔法で気配を読んだ。窓の無い部屋にまた寝かされていた。部屋の隅で椅子に座った侍女が眠っていた。いつもの無表情な侍女のジェニファーでは無い様だ。出口を見ると立哨の騎士も丸まって寝ていた。

「上司の仕業ですか…この人達後で処罰を受けそうだよ…上司は人間らしい配慮を全くしてくれないからね~」

人じゃありませんから人でなしでも仕方が無いか、とキアラは諦めた。


 そういう訳で、右手の中に蝙蝠が溶け込むイメージを浮かべる。そして蝙蝠女となった以上、黒蝙蝠が右手に溶け込むイメージを浮かべて蝙蝠の翼を生やした。

「ちょっと出かけて来ま~す」

立哨の騎士達に一声かけて部屋を出た。もちろん騎士達は寝ていたが。


 蝙蝠達はくねくねと通路を曲がって飛んで行く。これが見回りに遭わないルートなのだろう。上司はこういうところは用意周到だが、時々乱暴だ。監視役を無理に寝かせちゃうとか、遠出するのに食事の用意が無いとか。そんな事を考えていると、扉の前で蝙蝠が飛び回る。早く開けろ、ですか。上司共々人使いが荒いなぁ…ぎぃ、と手で扉を開けて外に出る。


 時間は夜で、この扉の近くにはかがり火や常夜灯が点いていなかった。近くの木に止まっていた蝙蝠数匹が飛び上がる。付いて行けば良いのだろう。なるべく羽ばたき音を立てない様に飛ぶ。蝙蝠達は近所からどんどん集まって来て、百匹を越えた集団を作って飛んで行く。


 蝙蝠の癖に夜会とは大人だね、と気楽に考えて付いて行く。城壁を越えて、上位貴族街近くの何かの事務所らしき場所の南の空に蝙蝠達がどんどん集まって来ていた。地上には、金属板で灯りの漏れるのを制限したランプを持った兵達が集まっていた。

「ああ、背徳貴族の兵達か…懲りないねぇ」


 相手は声を出さずに進んでいた為、こちらの声が聞こえた様だ。

「何者だ!?」

「見て分かるだろ?蝙蝠だよ」

兵達がこちらに灯りを向ける。黒マスクをした私が見える筈だ。

「構え!」

掛け声がかかり、槍持ちが前列に並んだ。この距離なら電気を沢山集めても間に合いそうだねぇ…と呑気に思っていたら、上空の蝙蝠達が降下して来て、それぞれが電荷を集めだした。え、珍しい、やってくれるんだ。

「なっ」「何だ!?」

反乱兵達が上空の光に目をやる。

そんな呑気で良いのかね?と思っていたら、蝙蝠達の雷撃が始まった。

「うわっ」「ぐわっ」「ぎゃあっ」

「上だ!上を突け!」

司令官が指示を出すが、当然槍の届かない間合いから次々と雷撃が落ちる。


「畜生如きに殺られてたまるか!」

中には剣を抜いて振り回す者も出だしたが、逆効果だ。剣に次々と被雷する。兵の半数が倒れたところで、後方の兵が逃げ出そうとするが、蝙蝠達は容赦ない。百匹近くが後ろに回り込んでやって来る兵達を順番に雷撃していく。どうしたんだ上司!?サービス良すぎるぞ。後が怖いな。今晩は雷雨ですきっと。


 雷撃による光を見つけて、城の外側を守っていた兵達がやって来る。軍旗が、あれだ。キャベンディッシュ公の軍旗だよ。不味いかな?後見人だった気がする。でも私はな~んにもしてませんから良いかな。先輩達が勝手にやってるんです。私は無実です。


 兵から声がかかる。

「何事だ!?」

「え~と、多分、主のお導きなので、反乱貴族の兵達だと思う。一通り倒れたら縛ってから蘇生してやって」

雷撃による光で私の蝙蝠の翼も見える筈だし、こちらが王家側である事は多分分かって貰えるだろう。それを聞いた何人かの兵が城に走って行った。


 さて、蝙蝠達は反乱兵達を全員倒しきって、私の上空に集まりだした。

「お疲れ様で~す」

後輩らしく、先輩達に労いの言葉をかけたが、十匹程私の目の前に降下して来て、揃って口を開いた。え、何?何か邪気を感じるんだけど、先輩方は本当に神の使い?


 そう思っていると一匹近づいて来て、私の右頬を蹴っ飛ばした。

「何?もしかして雷撃の駄賃に一発蹴っ飛ばすって事!?」

残り九匹どころか集まった蝙蝠全部が口をぱくぱくした。理解が早いな、ですか。蝙蝠達が容赦なく次々と後輩の私に蹴りをくらわす。二匹に一匹の割合で頬に刺さる。まあ聖魔法で治る傷だから良いか。一々治す。


 延々と蹴られては治すを繰り返していると、兵がランバートと護衛のジミー達を連れて来た。怪訝な顔をしたランバートが尋ねる。

「何やってんだ?」

「ああ、蝙蝠先輩方が私の代わりに反乱貴族の兵達を雷撃で倒してくれたんだよ。で、その駄賃として蹴りを貰ってるんだ」

「そんな約束したのか?」

「私がする訳ないよ。主が私の許可も得ずに勝手に約束したみたいだよ」

「おい、ひっかき傷が出来てないか」

「ああ、気にしないで良いよ。ほら、もう治った」

「…それで良いのか?」

「主のやる事だから、文句の付け様が無いよね?」

「…まあそうだが」


 そういう事で、ランバート達やキャベンディッシュ公の兵の前で、蝙蝠に蹴られる蝙蝠女が何十回も聖魔法で自分を治して平然としていた、さすが天の使いはものが違う、という噂が後に流れた…それ何か微妙な評判だよね!?

 明日も更新します…書き終わってないけど!

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