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1−6 襲撃 (1)

 そういう訳で、夜にはキアラの打撲は完全に治っていた。だから王都から来た馬鹿共の事なんてきれいさっぱり忘れた。


 寮母室で燭台につけてもらったロウソクを持ちながら寮の自分の部屋に入ったキアラは、昨日ツギを当てた外套を被って窓から外に出た。林の木々の隙間で空気の翼を広げて飛び立ち、目印の大岩まで西に飛んだ。今日も名も知らぬ上司からの指示に従う気はないから、そこから南に旋回して都市の方へ降下して行った。それに気づいて慌てて二匹の蝙蝠が遠くから付いて来る。まあ千里眼に等しい筈の上司の指示で後から追いつくだろうから気にしないで飛んで行く。


 商店街に入って、パン屋を探す。良く咀嚼する必要があるから飲み物が必要なビスケットよりパンが良かろうと思ったんだ。パン屋では今日の売れ残りの丸パンがあった。

「これを五個でいくら?」

「銅貨10枚」

…フードで顔を隠し低い声で喋っても女と分かるのだろう。どうせ工場労働者なら価格など分かるまいとぼったくり価格で売ろうとする。

「銅貨5枚なら買うよ」

「まけても9枚だ」

…話にならない。

「じゃあ、いらない。売れ残りにカビが生える前に売れると良いね」

「お前らの知った事じゃない」

…お前ら、ね。やはり解雇された工場労働者だと思われている様だ。金が無いと知っていてぼったくる。本当に鬼畜だね。もう開いている店も少ない。結局今は入港する船が少ないから売れないビスケットを買う事にした。


 繁華街の外れの公園の向こう側に並ぶ廃屋に何人かの人気を感じる。扉には閂すらかけていない。この都市で一番貧しい冬の街娼から奪うものなど何もないんだ。

「ごめんください」

扉から入って最初にある比較的大きい部屋の奥に、二部屋に二人ずつ人が寝ているのが空気の流れで分かる…息が弱々しい。

「誰だい?」

すこし掠れた声で一人から誰何の声があがった。

「後輩です。ささやかながら差し入れを持って来ました」

そう言うと四人が奥の部屋から出て来た。

窓の隙間から隙間風と月明りが漏れているおかげで彼女達にも私の事が朧げに見えているだろう。私の方は夜目が利くから彼女達がやつれ切っているのが見える。

「すいません、パンを持って来たかったんですが、工場労働者あがりと思われてぼったくられそうになったのでビスケットになりました」

「くれるのかい?」

「ええ、大変だと聞いて。ささやかですいません」

「少しでも助かるよ」

十枚のビスケットを一人二枚ずつ受け取って、二枚を二つに割って四人で食べた。

「あんたは良いのかい?」

「幸い、食事は出るので」

工場を抜け出して来ているなどとは言えない。高い壁を越える方法は普通の女性労働者には無いのだ。

「就職出来たのかい。良かったね」

「お給金は僅かですが」

「だったら大事に貯めときな。クビになったら仕事なんてないんだからね」

「はい。無理しないで何かしようとすると、この位になってすみません」

「良いよ。助かったよ」


 また来るとしたら来月になる。それまで彼女達は生きているだろうか。本当は他にも何軒かある街娼達が住む廃屋にも差し入れをしたいが、そんな余裕は無いし、バラまけば一人分が少なくなり結局飢え死にさせる事になる。

『もっと根本的な解決策を考える』

かつて聖女に言われた言葉だ。そうは言われても先立つものが無い以上、解決策など何も出来ない。金が無いという事は罪なのだ。思わず俯いて歩いてしまう。


 公園まで戻り、思案するが、もう持ち金に余裕は無い。ここから飛び立って工場へ戻ろうかと思ったが、蝙蝠が羽ばたいている。何か言いたげだが蝙蝠は言葉を喋れない。


 うん?商店街の方で何か不穏な空気がある。早足で繁華街を通り抜け、商店街に向かう。商店街の外れ近くで、乱闘らしき争いがあった。外套を着た5人組がマフィアの下っ端達と思われる大勢と争っていた。剣や槍を振り回す者達の真ん中に守られているのは昼間見た女性だ。私を薙ぎ倒した若い男も下っ端二人相手に剣を振るっている。はあ、無抵抗な女には無双するのに下っ端相手には苦戦してるのかよ、情けない奴。もう一人の騎士の男も槍使いも三人を相手にして防いでいるのに。


 真ん中に守られている女性の隣にいる中年男性は昼間見た聖魔法使いだ。つまり、修道士かな?棒術で下っ端を押し戻しているが、少し手が足りない様に見える。そうしていると一人が女性に片手剣で切りかかろうとしている。女を狙うとは見下げた奴。仕方なく足元の手ごろな石を投げてそいつにぶつける。

 思ったより文字数が少なかった…続きは木曜に。明日はクリスティンの更新です。

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