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5−13 遠征 (6)

 正門側の死体は双方合わせて百を越えた。その死体の山が砦側の突撃を妨げる。その血生臭い障害物のおかげで、やっと攻撃側は跳ね橋の開閉機構を操作する時間が取れた様だ。ぎりぎりと音がして、跳ね橋が降りて行った。跳ね橋を渡って百人以上の兵が突撃して来る。元々砦の兵力は不足していたのに、ここに来て五十人以上が正門前で失われ、通用門側では二十人が蘇生の途中だ。跳ね橋から渡って来た兵力は砦の正門攻撃に入り、迂回路を求めてこちらにも来た。こちら側に戦列を作っていた砦側の兵達は、ここで武器を捨てて降伏の意を示した。


「降伏するなら手足を広げて地面にうつぶせになれ!」

攻撃側の指示に従い、半数がうつぶせになったが。

「二十人を蘇生中なんだ。その人数だけは勘弁してやってくれ」

跳ね橋からやって来た部隊の指揮官は通用門側の指揮官の方を向いた。

「雷撃で倒れたんだ。殺すつもりがないなら蘇生はやらせてやってくれ」

通用門側の指揮官も相手のやる気のなさを感じていたんだ。


 それでも跳ね橋からやって来た指揮官は守備側の兵に尋ねた。

「主君に対する忠誠心は無いのか?」

「忠誠心?領主と領主の息子がよろしくやる為に奴隷を買った罪で罰せられるのを嫌がって戦をしてるんだぜ!?そんな事で死ぬのは御免だ!」

砦側の兵も何が起こっているのか分かっていたんだ。だから、攻撃側の指揮官が更に要求した。

「誰か道案内をしろ!」

「勘弁してくれ。領主達は憎いが、仲間を裏切って道案内までは出来ない…」

ここでキアラが堀の無い方向の抜け道を思い出した。

「攻撃側は、堀の無い方向に抜け道があるのは知っているのか?」

指揮官は知っている様だった。

「一応、林の方に待ち伏せ部隊を置いているが…そうだな、この中に抜け道の出口を知っている者はいるか?」

砦側の指揮官らしき男が苦い顔をしながら言った。

「これだけ家臣が死んだのに、原因である領主親子だけ生き延びるのは堪らんな…林の中に岩があって、その近くに薄く砂を撒いて偽装した出口があるんだ」

それを聞いた攻撃側の指揮官が伝令を走らせた。


 こちらがそんなやり取りをしている間に、砦の建物に横から侵入した攻撃側の兵が正門の内側も制圧した。そうして跳ね橋から砦の正門側に敵兵はいなくなった。


 リッチモンド候の参謀であるダン・サーカムがやって来て口を開いた。

「ここはもう良い!裏の監視に加わってくれないか?」

プラント親子を捕縛したいのは私も同じだが、能力には限界がある。

「私は監視能力はそんなに無いんだ。行っても役に立てないかもしれないよ?」

「そこは何とかしてくれ」

上意下達、丸投げ、偉いさんはこんな指示で部下を死なせるんだ。今回は死ねという命令ではないが。そんな命令は聞く義務も無いのだが。

「とりあえず行ってみるよ」


 もう今更翼を隠すまでも無い。黒蝙蝠が右手の中に溶け込むイメージを浮かべる。蝙蝠の翼が伸びる。そして右足で地面を蹴って飛び上がる。敵味方から声が上がるがまあ無視だ。


 それまで近くの木にぶら下がっていた蝙蝠先輩も飛んでくる。いいな、荒事はやらないで見ているだけで良いんだから。とは言え、蝙蝠先輩は先導してくれる。上司の指示でプラント親子を捕縛する手伝いをしてくれるのだろうか。


 砦を飛び越して、裏の壁を通り過ぎる。林の上空をこちらとは別口の二匹の蝙蝠がくるくる回りながら飛んでいる。そこですか…今回は上司もサービスしてくれるなぁ。後が怖い。


 近くに兵が広がっている。そして低木に身を隠す様に散兵している。近くに飛び降りて声をかけようとするが、逆に誰何の声上がる。

「何者だ!?」

「ダン・サーカムの指示だよ。ここの指揮官はどこ?」

その兵士は近くの味方を見るが…その見られた兵士の方が声を上げる。

「あっちに旗が立ってる。そこで声をかけろ」

その方向に旗が斜めにされている…目立たぬ様に、しかしどこの兵か分かる旗は上げていたよ、と言い訳出来る様に上げているんだ。そこに翼を収めて近づくと槍を向けられた。

「何者だ!?」

「ダン・サーカムの指示で応援に来たんだよ。二人兵を貸してくれないか?」

「どういう指示だ!?」

「言うまでも無く、プラント親子の捕縛に加われって指示だよ」

指揮官は少し悩んだが、証拠を見せてもらいたがった。

「蝙蝠の翼を見せてくれ」

どうやら昨晩中に私の噂は流れたらしい。蝙蝠の翼を現し、羽ばたいて見せる。

「分かった。信用する。二人連れて行け」


 二人の兵を連れて蝙蝠の飛び回っている下へ向かう。確かに岩がある。割と大きく、3ftの高さはある。そして、その前は茶色い地面が見えている。ちょっと風を当ててみるか…ん、ここみたいだ。風で叩くと揺れる場所がある。そこから少し離れて低木に身を隠す。全員出てきてから仕掛けて、少なくともプラント子爵と息子は確実に捕らえたい。


 しばらく待つと、地面から扉らしきものが持ち上がる。一人が様子見の為に顔を半分だけ地面から出し、周囲を見回す。確認後、扉が完全に開き、中から二人の兵が出て来る。

「いない様です」

小声で扉の中に話かける。その後に六人の兵が出て周囲を警戒した後、壮年の男と昨晩見たお坊ちゃんが出て来る。

 すいません、金曜なので油断して寝落ちしてました。明日…じゃなくて今晩も更新します。

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