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5−12 遠征 (5)

 まず一人の兵が橋を渡った。安全の確認の為だ。渡って来た兵は私に話しかける。

「橋は問題ないか?」

「あんたくらいの重さなら問題ないよ」

それを聞いた兵が右腕でおいで、というジェスチャーをする。それを見て後続も空気の橋を一人ずつ渡って来た。


 十人が渡ったところで、八人が正門方向に忍び足で進み始めた。その間にまた八人が通用門前の空気の橋を渡り、正門方向に進んで行く。この時まだ砦側の反応は無い。更に八人が渡って来たが、この内四人が弓兵だった。持って来た板を立てて、そこに屈んで砦側を伺っていた。他の四人も持って来た大盾を立ててこの通用門を拠点として守る姿勢を示した。


 次の八人はやはり正門攻撃の為に忍び足で進んで行った。風の流れから最初の八人が正門にかなり近づいた事が分かったが、そこで複数の笛が正門方向から鳴った。

「敵襲だ!砦に入り込んでいるぞ!」

「起床!正門に兵を送れ!」

これに続いて砦の中から松明を持った兵が出てきて、正門側に弓を引いた。


「到着次第、正門に向かえ!走れ!」

この通用門の拠点の防衛体制を取っている盾持ちの一人が指示を出す。正門側はこちらの弓兵がいないから、片手の盾を構えて何とか防御をしている状態だ。次に通用門側を渡って来た大盾と弓の部隊がそちらに走って行く。


 そろそろどこから兵が渡っているか砦側も分かったらしい。

「通用門だ!門を閉めろ!」

気付かれたか。まだ魔力的には余裕があるから迎撃の手助けをするか。自分が死にたくないからね。最初にこちらに向かってきた兵は、こちらの兵の弓で射られて次々と倒れた。それでもこの通用門前には弓の射手は四人しかいない。砦側は大盾が十人も来て臨時の防御陣を敷いた。そして弓兵がその合間から射だした。


 しかし、弓矢は風魔法師と相性が悪い。以前は集中的に射られて対処に困ったが、もう対処は考えてある。所詮、矢羽根で風を切って来る以上、風で逸らせることが出来る。途中で斜めに風を送り、こちらに近いところで防御膜を作る。そうすると次々と射られる矢が悉く大きく外れる。すると連中は逆側に向かって射出したが、今度は逆に風を流して大きく逸れる様にする。今度は大きく山なりに射て来るが、それこそ斜めの風で大きく逸れる事になる。


「途中で風を起こしているから、こっちからは射らない方が良いよ」

「もっと広範囲に出来ないか!?」

「橋が無くて良いなら考えるけど?」

そう言うと男は黙った。まだ正門側の制圧が出来ず、跳ね橋を降ろす事が出来ないから、継続的な兵の供給が必用なんだ。


 正門側では砦側から突撃隊が走り込み、血飛沫で正門の橋板が赤く染まる。走れなくなっても動ける者が敵の足にしがみついて味方の援護をする。だから双方、確実に息の根を止める事が必用だった。こんな風に人殺しに慣れたら、無力な女の息の根を止めるくらい何とも思わなくなるのだろうか。


 砦側の突撃隊はこの通用門の方にも結成されたらしい。鉄兜を被って弓から頭部を守った兵達が揃って、こちらに走って来た。こうなれば仕方が無い。こちらも死にたくないんでね。右腕を上げて電荷を集める。私の右手の上に10ftの光が発生する。こちらに構わず突撃隊が走って来るが、その前に向けて右手を斜めに振り下ろす。横に複数回、雷撃が飛び、走って来る兵達を掃討した。鉄兜なんか被るから、満遍なく被雷している。全員が気絶した。それを見た先頬話しかけて来た男が再び口を開く。

「そんなのが出来るなら、もっと向こうに打ってくれ!」

「だから、橋がいらないならもっとやってやるよ」

私自身、どういう条件で倒れるのか分からない以上、魔力の無駄遣いは控えるべきだ。こんなところで倒れたら殺される。


 こちらはまだ兵の供給が必用だから橋が必用だが、あちらは雷撃を見てもまだやる気があるらしい。大盾の後ろに十人以上が集まった。鉄兜を被った連中だ。まあ弓が恐い以上、兜を被りたいだろう。

「行け!」

指揮官の叫び声で男達が走り出す。悪いが私もまだ死ぬ気が無い。だから再び右腕を上げて電荷を集めて、斜めに振り下ろす。叫び声すら上がらず、先程の連中の向こう側でまた全員倒れた。


 しかし、引っ張って行って蘇生して貰わないと、死ぬ奴がいそうだ。

「おい、味方を引っ張っていくだけなら攻撃しない。回収して蘇生しろ!」

向こう側に告げるが。

「勝手な話をするな!」

こちら側の指揮官らしき男が文句を言う。

「被雷してすぐ動ける訳がないよ。感電か恐怖か分からない震えが止まらないだろうよ。だから、奴らが世話している間にこちらが正門を落とせば良いんだよ」

向こう側から声がした。

「本当に攻撃しないんだな!?」

「そっちがその倒れている奴よりこっちに来なければね」

そう言われて恐る恐る、三人ほど出てきて手前の奴を引っ張っていく。こちらの弓兵が私を見るが。

「そのくらい待ってやれよ」

正門前は血で地面が真っ赤に染まっているが、こちらは微妙な雰囲気が流れた。さっきから思っていたんだが、こちら側にいる砦側の兵達は、あまりやる気を感じないんだ。グラハムの部下達の様にきびきびした動きをしていない。

 実はキアラの雷撃は空気中の電荷を集めるだけなので、そんなに魔力を使ってません。明日も土曜も更新予定です。

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